ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

【ぼっち侵略1~3巻期間限定無料配信企画】ひとりぼっちの地球侵略1~3巻をざっくりまとめてみた。

こんにちは、さいむです。

今回、ひとりぼっちの地球侵略1~3巻が期間限定で無料配信になったことを記念して、それぞれの感想を一つにまとめた記事を作りました。

1~3巻の期間限定無料配信についてはこちらの記事をお読みください。

thursdayman.hatenablog.com

お試し版を読み終わって、ここまでの内容について感想を読んでみたい!という方はよければお読みください。

 

【※注意※】

こちらは、以前書いたぼっち侵略1~7巻をざっくりまとめた感想記事を3巻までで再編集した記事となっています。

編集元の記事はこちら。

thursdayman.hatenablog.com

なお、今回も(巻数:ページ:コマ数)という風に見ている箇所を示していくので、電子書籍のページを確認しながらお読みください。では参りましょう。

 

1巻:ぼっち侵略の基本の3ポイント。

 

さて、1巻なのですが、1話と2話はこの漫画を理解するうえで最も重要です。ここを理解しないことには先の内容を適切に理解できません。なので……。

 

thursdayman.hatenablog.com

まずはこちらをお読みください!……いや、こればっかりは省略できないので……。

取り敢えず、ここで結果だけ改めて書くと、「広瀬くんの心臓が港の鍵となっている(あるいはそれに類する役割)」、「大鳥先輩は他人と交流したことが無く、広瀬くんこそが一番最初に出会えた自分と対等の人間である」ということです。まずはこの二つを抑えないといけません。そこを踏まえたうえで、3話と4話の話が可能になります。

3話と4話では、それぞれ広瀬くんにとっての日常と、大鳥先輩の日常が交互に描かれます。

3話では大鳥先輩が広瀬くんの日常に少しづつ入り込んでいく中で、広瀬くんが自らの方針を少しづつ固めていくお話。地球侵略という非日常が目の前にあるのに普通の日常を過ごさなければならないという矛盾を、結果は無理に考えずまずできることからやる、という答えで乗り越えていく。これによって、広瀬くんの日常が大鳥先輩を通して変化し始めます。

4話では、反対に広瀬くんが大鳥先輩の日常である地球侵略に関わることで、大鳥先輩の日常もまた変化していくことを予感させる話となります。今まで単なる暇つぶしだった学校生活が広瀬くんのおかげで少しづつ楽しくなってきて、そうであればこそ大鳥先輩は自分の日常である地球侵略という事情に広瀬くんを巻き込みたくない。しかしそこで広瀬くんは、もうひとりぼっちではないのだから自分を頼ってくれ、と訴えかけます。大鳥先輩にとって唯一の存在意義である地球侵略に広瀬くんが加担することで、大鳥先輩にも変化が現れていることが分かる一幕です。

ここまで見ていくと分かるように、2話のラストでそれぞれ「地球制服のために!」「宇宙人から家族を守るために…」と自らの目的のために仲間となった二人が、お互いがいる日常の中で成長し始めている様子が見てとれます。ここが先の1話と2話の感想でのまとめに続く、1巻での重要なポイントになります。先ほどの2点と合わせると、

一つ目。
・大鳥先輩が生まれたときから他人と触れ合うことのない生活を送っていた状態から脱出し、少しずつ他人や仲間という存在について広瀬くんを通して知り成長していく。

二つ目

・港や心臓、魔法といったキーワードの秘密を少しずつ解き明かしつつ、大鳥先輩の地球侵略の目的やオルベリオの実態など地球の外の世界の秘密を探っていく。
うん。これも全うに普通。

三つ目

・大鳥先輩と広瀬くんが地球侵略と家族を守るというそれぞれ違う目的の元に協力しながら、様々な事件を経るに連れてお互いを理解し合って関係を深めていく。

この三つがぼっち侵略一巻における重要なポイントになります。これらを抑えることによって、以後のぼっち侵略の物語をよりしっかりと把握することができるはずです。では、この調子で次の巻に行ってみましょう。

 

2巻:「誰かを大切に思う気持ち」

 

上の台詞は1巻2話における大鳥先輩のものですが、2巻ではこの台詞を覚えておくことが重要となります。2話の時点で大鳥先輩は広瀬くんの様子を見て誰かを大切に思う気持ちがどのようなものなのか「観測」したに過ぎません。4話では壊したくなかったとも話していますが、ここで大鳥先輩が壊したくなかったのは広瀬くんのいる楽しい日常であって広瀬くん自身とはまた少し違います。そんな大鳥先輩が誰かを大切に思う気持ちを初めて自覚することになるのが2巻となります。

 

まず前半で広瀬くんの弟、凪が出てきます。二人が似ているというだけで大鳥先輩は戸惑ってしまいます。ここでの大鳥先輩は二人の見分けがあまりついていないという風に考えることもできるでしょう。確かに広瀬くんは彼女にとって初めての仲間ですが、同時に単に自分の心臓を持つ地球人(心臓が溶け込んだという点ではオルベリオ人側)でもあるわけで、彼女にはまだそれ以上の思い入れがないのでしょう。

 

そんな広瀬くんがリコとの戦闘であっさり死亡し(たように見え)ます。ここで大鳥先輩は、誰かを失った悲しみを初めて感じ、同時に激しく怒ります。リコに「あの地球人とお前は関係ないだろう!?」と言われて更に激怒して、リコを戦闘不能に追い込みます。結局、ここでの大鳥先輩は広瀬くんのことを「自分の心臓を持つ初めての仲間」「いつもより楽しい学校生活を過ごさせてくれた"暇つぶし"」以上にはまだ考えられていなかったのでしょう。考えなかったのではなく、「誰かを大切に思う気持ち」が分からない以上、そう思う発想がなかったのです。だからこそリコの疑問に拳で返すしかなかったのでしょう。

 

その後、死んでしまった広瀬くんに大鳥先輩はキスをします。これは、誰かを大切に思えるようになったのに、その唯一の相手である広瀬くんが死んでしまっているからです。死んでしまった人に対して大鳥先輩が最後にできたのは惜別のキスだけだった、ということなのでしょう。……まぁ、広瀬くん生きてますが。

 

この後、大鳥先輩は凪と広瀬くんの見分けがつくようになります。勿論凪が大鳥先輩に対して態度を変えて接するようになったのもありますが、広瀬くんという個人を大切に思えるようになったことで、しっかり二人を見分けられるようになったとも考えられるでしょう。

また瀧さんに関係を問われた際、「キスはもうしたよね?」と広瀬くんに問いかけます。これは「誰かを大切に思う気持ち」を他人に証明できるものが、広瀬くんにキスをしたことしかないからそう言っているだけであって、別に広瀬くんをからかいたいわけではないのでしょう。

さて、以上のまとめから、大鳥先輩が「誰かを大切に思う気持ち」を自覚し、広瀬くんを個人として捉え始めたのが2巻であると考えることができるでしょう。1巻において仲間や他人というものを初めて得ることができ、それが一体どういうことなのかを理解した大鳥先輩は、2巻でその仲間を個人として大切にすることができるようになったのです。そして、現時点でその唯一の証明である「広瀬くんとのキス」がこの後の3巻の内容に繋がっていくことになります。

 

今回初登場したリコについて少し触れておきましょう。彼の面白いところは、広瀬くんと大鳥先輩の敵として描かれたにもかかわらず、ショウキマンというヒーローに憧れている部分です。広瀬くんにとって、リコは家族や街の人々を脅かす悪い奴です。しかしリコにはリコで星団連でも序列の低い自分の星を救うという使命があります。広瀬くんには広瀬くんなりの正義があるように、リコにはリコの正義があることがショウキマンというキャラクターを通して描かれているのです。そしてリコとの戦闘後、広瀬くんはおじいちゃんがコーヒーを焙煎する様子を見て自分が守るべきものを再確認します。リコとの戦闘は、広瀬くんにとって「相手にも侵略する理由や事情がある」ことと、「それでも自分には守るべきものがある」ことを理解するきっかけになったと言えるでしょう。

3巻:地球人と、オルベリオ人。

 

さて、3巻の内容についてですが……まず、3巻が発売された頃に掲載された小川先生のインタビュー記事をご覧ください。

 

natalie.mu

 

こちらの2ページ目の質問に注目したいのですが、小川先生が「大鳥先輩にとって地球人とオルベリオ人は対等な存在ではない」といった主旨のことを話されています。3巻はここを踏まえて読むとより分かりやすく読んでいくことができます。

まず、アイラちゃんが登場した後に青箱文化祭の準備が始まります。今までだったら適当に傾いて過ごせた筈の大鳥先輩でしたが、放課後の広瀬くんとの読書タイムの時間まで無くなってしまったためにストレスを感じてしまいます。1巻4話では広瀬くんが地球侵略の方に関わることで楽しいひとときが台無しになることを恐れていましたが、今回はまさかの地球人側の都合によってその時間がなくなってしまう事態に陥るのです。

そんな時に登場するのが、アイラちゃんに続く3人目の女性キャラ、古賀時緒ちゃん(以下古賀さんと呼びます)。彼女は大鳥先輩から見て、言わば地球人の象徴的存在として立ちふさがります。アイラちゃんも一応地球人側ですが、彼女は微妙に他の血も混じっているので。何より、古賀さんは「大鳥先輩は、岬一くんとどういう関係なんですか?」という、あのリコや瀧さんと同じ質問をしてきます。前の二人と違い、古賀さんは必死に聞いてくるので大鳥先輩もたじろいでしまいます。しかも瀧さんのときとは違い、自分の心臓を持つため本当はオルベリオ側であるはずの広瀬くんが文化祭という地球人側の事情で一緒にいられない時にこの質問がきたわけで、古賀さんは大鳥先輩にとって自分と広瀬くんの間に立ちふさがった地球人として認識されることになります。

しかし地球侵略の仲間とも言えないため、ここで大鳥先輩が返す答えはやはり2巻の瀧さんのときと同様「キスはしたもん!」しかないのです。大鳥先輩は広瀬くんを大切に思うようになったとはいえ、それはまだキスという形でしか証明されたことがないのだから仕方ありません。瀧さんのときといい古賀さんのときといい、大鳥先輩が基本的にキスを恥ずかしがっていないのは、恋愛感情ではなく「誰かを大切に思う気持ち」に基づくものだったからでしょう。……いや、2巻のスカートの件といい本当に疎い可能性も……でも付き合ってる云々にもちゃんと答えてるしなぁ……。

それはさておき、そんなときにユーシフト族がやってきます。大鳥先輩は早く広瀬くんと帰りたいため、一人で迎撃に向かいます。その後広瀬くんとリコの助けもあって一時撃退に成功するのですが、問題はその後です。

「俺もみんなと一緒に駅まで行くよ、危険だしな」(3:112:4)

「先輩も一緒に来てくれるだろ?」(3:112:6)。

113ページでは広瀬くんが下校する生徒≒地球人(古賀さんもいる)の方に立って大鳥先輩を読んでいます。この状況、今までのやりとりを念頭において読み直すと、オルベリオ側の筈の広瀬くんが、ようやく二人きりになれるはずの状況で、一緒に過ごせなかった地球人の方に混ざろう、と呼びかけていることになるのです。大鳥先輩にとって対等な他人は広瀬くんしかいないのに、その広瀬くんはあろうことか地球人側に立っている。これにショックを受けた先輩はキレて一人で帰ってしまいます。

そして文化祭当日。うんうん悩んだ大鳥先輩の出した答え、それは「そこまで言うのなら地球人側に混ざって地球人っぽくやる!!」というものでした。キラキラ大鳥先輩降臨の瞬間です。天邪鬼ですね。見た目可愛いですが終始キレっぱなしです。

勿論そんなこと察せられるわけもない広瀬くん、頓珍漢な答え(ではないのですが、大鳥先輩からするとてんで的外れ)しか返せません。大鳥先輩は広瀬くんを盗ってった地球人の象徴(として認識できる)古賀さんにイライラしますが、だからといって何ができるわけもなく、そのまま突っ走ります。そして倒れます。

そんなときにユーシフト族と第二戦。164~165ページで大鳥先輩は自分の気持ちをようやく吐露します。ただ「二人っきりで」という言葉が抜けていますが。あくまで一緒にいたいのは広瀬くんだけです。

するとその広瀬くんが壇上に上がってきます。広瀬くんは1巻で地球侵略、つまり大鳥先輩の目的に協力する決意をはっきり決めた後、2巻でリコに殺されかけています。あのとき一度自分が死んだこととリコが大鳥先輩に目の前で殺されかけたことは、「自分が地球を守るためには相手と命がけで戦わなければない」という覚悟を広瀬くんに植えつけました。しかし大鳥先輩にとっては広瀬くんが危険に晒されてしまったことへの後悔が残り、そのせいで一人でユーシフト族と戦いに赴きます。広瀬くんは心臓の力を使ってリコと共闘するのですが、そこで先ほど言及したすれ違いが起こってしまうのです。広瀬くんは大鳥先輩の地球侵略をもっとちゃんと助けようとしていて、大鳥先輩は広瀬くんと過ごす学校生活をもっと大事にするために地球侵略を一人で果たそうとする。1巻の3~4話で二人がそれぞれの日常や目的に関わり始めたのが、2巻の出来事を通してここでより深い形ですれ違っていることが分かるでしょう。

その広瀬くんもようやく大鳥先輩の心情が(一部)分かったため、自分のために心臓を使いたかったのではなく、大鳥先輩の力になりたかったんだと自分の気持ちも打ち明けます。ここでようやく二人の誤解は解け、ついでにユーシフト族も退治されます。

184ページでの二人のやり取りは3巻を通して続いた二人のすれ違いの終着点と言えるでしょう。広瀬くんには地球人側の役に立ちたいという欲があるのではなく、「焙煎職人になりたい」という目標がある。「家族を守る」という地球侵略に加担する目的以外に、彼が望むものはそれぐらいしかないのです。大鳥先輩はそれをここで理解します。また広瀬くんも、大鳥先輩の役に立ちたいと本気で願うようになったり、大鳥先輩が地球人らしく振る舞って自分から一時離れてしまった様子を見て、少しづつですが我がままで自分勝手な大鳥先輩のことも受け入れられるようになっています。

3巻を大鳥先輩の成長の視点でまとめるのなら、「地球人やオルベリオ人といった立場の交錯を通して、そのような立場に縛られない自分自身の望みというものがあることを知った」となるでしょう。これは1巻において大鳥先輩が「誰かを大切に思う気持ち」を広瀬くんを通して観測したのと同様であり、まだ彼女自身がそのような望みをもてたわけではありません。しかしそのきっかけとなる出来事だったことは間違いないでしょう。大鳥先輩と広瀬くん、それぞれ成長の兆しがはっきりと現れてきたのです。これからどうなっていくかが楽しみですね。

 

【おわりに】

以上、ぼっち侵略1~3巻までのざっくりとした感想でした。もし今回の期間限定無料配信とこちらの感想記事を通してぼっち侵略により興味を持たれましたら、4巻以降も手に取ってみてください。7月8日には最新10巻の電子書籍版が配信開始されるので、普段電子書籍で漫画を読まれる方もこの機会に是非。

それでは。

 

ひとりぼっちの地球侵略10巻の内容をざっくりまとめてみた。

こんにちは、さいむです。今回はぼっち侵略10巻について、内容をざっくりまとめながら色々考えていきたいと思います。

10巻は帯にて『交錯する、「兄弟の因縁」、「姉妹」の因縁』と書かれているように、広瀬くんと凪の対決、大鳥先輩とマーヤの対決がそれぞれ比較されるように描かれています。一方で、それぞれの戦闘においても各々の心情や成長をしっかり掘り下げる描写や演出が多数あり、戦闘の多さも相まって大変見応えのある巻です。ここでは話題を広瀬くんと大鳥先輩の変化や成長に絞りつつ、その他のポイントにもざっくり触れることで作品全体を眺めていきましょう。

 なお、既刊の内容などにも幾つか触れていますが、そちらに関しては発売前に投稿したこちらの記事を先に読まれるとより分かりやすくなりますので、良ければどうぞ。

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1.広瀬くんへと本格的に移っていく心臓の主導権。

まずは10巻において最も言及が多かった広瀬くんの心臓についてです。色々ありましたが、これはざっくり言ってしまえば9巻において大鳥先輩が広瀬くんの変化を認めたことに由来しています。8巻から軽く振り返ってみましょう。

8巻で大鳥先輩は、広瀬くんが自分にとって特別である唯一の理由になっていた心臓の絆をマーヤに夢の中で否定されます。そこから10年前の絆としてではなく、広瀬くんが大鳥先輩のために努力してきた証として心臓を捉え直したのが9巻でした。

それらを踏まえた10巻では、第46話「夜の中へ」にて大鳥先輩が次の戦いに向けて広瀬くんを特訓させています。心臓が広瀬くんの成長と努力の証と捉え直したのなら、今度は大鳥先輩もそれに応えなければなりません。広瀬くんが大鳥先輩と一緒に歩んでいくつもりならば、大鳥先輩は自分について来れるよう広瀬くんを鍛える必要があったわけです。

その後、第49話「静寂の呼び声」ではゾキから広瀬くんの心臓について新たな真実が語られます。これについては解説がちょっとややこしいので、詳しいことは別の記事で書かせて頂きます。重要なのは、あの真実を通して心臓の主導権が設定的にも広瀬くんに移ってきたことです。

9巻まで、心臓は元々大鳥先輩のものであると語られつつ、それを広瀬くんが成長していく中で”大鳥先輩から譲り受けた自分のものである”と主張してきました。しかし裏を返せばそれはあくまで広瀬くんの成長を裏付ける、心情的な側面のみにおいてのものでした。心臓の力を少しずつ使いこなせるようにはなっていたものの、根本的には常に”オルベリオの心臓”として扱われてきたのです。

10巻ではそれがひっくり返されます。広瀬くんの心臓は文字通り広瀬くんだけの特別な心臓であり、彼自身がこの状況の中心的人物ということになったのです。正確には1巻の頃から広瀬くんは設定的にも重要な存在だったのですが、それはオルベリオ(大鳥先輩)の心臓を持つからという理由であり、彼という人間自身はそこまで重要ではありませんでした。が、今は違います。支配の力を持つオルベリオの心臓を体内で進化させてきた広瀬くんは、その力を完全に使いこなせさえすれば全宇宙の支配すら可能にしてしまいかねないのです。そんな心臓を(正確にはその力を)ゾキも狙っています。今の広瀬くんには、大鳥先輩についていくためではなく、自分の問題を解決するために心臓の力と向き合うことが求められているのかもしれません。広瀬くんと心臓の関係がどうなっていくか、これからも注目していく必要がありそうです。

2.2巻の再演を通して描かれた大鳥先輩の理解と言葉。

広瀬くんの次は勿論大鳥先輩ですね。大鳥先輩は7巻から「相手の気持ちを想像して行動できるか」が重要な課題として描かれてきました。10巻ではその課題に大きな進展が見られました。具体的にはマーヤとの戦闘シーンがそれに該当します。10巻の見せ場でもあるので少し読みこんでみましょう。

まず、大鳥先輩はアイラちゃんが入院している病院でマーヤとの戦闘に突入します。ここから遊園地に行くまでは、今まで作品内で出てきた場所をあちこち回っていますね。20Pで全体像がハッキリ見える病院は4巻の過去編、10年前に凪が入院していたそれでしょうし、94P前後の一度街の人々を巻き込みかけた場所は5巻の最後で戦闘していた橋の近くでしょう。最後に辿り着いた遊園地は、勿論2巻ですね。

それはさておき、マーヤは独自の魔法とナイフで大鳥先輩を追い詰めていきます。ここでマーヤがメリーゴーランドを破壊しているのが大きなポイントです(115P)。ぼっち侵略2巻が発売された際、帯に書かれた文章の中に「遊園地の破壊」という言葉がありました。2巻の中でもあの観覧車の破壊は象徴的なシーンでもあります。そして、観覧車もメリーゴーランドも回るアトラクション。この戦闘シーンは2巻の大鳥先輩とマーヤとが重なるように描かれているのです。大鳥先輩の「…あ、この辺……近くだ…」という台詞がそれを示しています(114P)。

 大鳥先輩に対する怒りと憎しみを原動力にして襲いかかるマーヤ。マーヤと戦いたくない大鳥先輩は彼女にかける言葉を探しますが中々見つかりません。とうとう追い詰められ、もうだめかというときに「広瀬くん…」と漏らした一言がマーヤに刺さります。

2巻はリコとの戦いを通して大鳥先輩が仲間という曖昧な概念から、広瀬くんという一人の人間に意識を初めて移す話でもあります。マーヤはこの瞬間、失われてしまったかつての仲間たちではなく凪というただ一人を失った悲しみを思い出します。ここも2巻の大鳥先輩と重なっているのです。そして、2巻と重なっているマーヤの姿が、大鳥先輩に彼女の気持ちを想像させるきっかけをもたらします。

マーヤの目に浮かんだ涙を見た大鳥先輩がようやく見つけた言葉、それは以前リコにかけられた言葉と同じ「なにがそんなに悲しいの…?」でした。理由は分からなくても、同じ悲しみを感じたことがあるから理解し、放つことができた言葉は、やっとマーヤへと届きます。9巻で広瀬くんの気持ちを受け止め変化を認めることができた段階から更にもう一歩前進し、相手の心情を想像し言葉をかけられるようになったのです。「誰かを大切に思う気持ちってよく分からない」と言っていた1巻の頃と比べると本当に成長していますね。広瀬くんが変わってきているように、大鳥先輩も着実に変わってきているのです。

3.凪とゾキ、そして各々のこれから。

最後に、凪とゾキの現状を軽くまとめつつ、それぞれのキャラクターの今後について少し考えてみたいと思います。

まずゾキと凪ですが、9巻のざっくりまとめでも書いたように二人の関係がまだよく分かりまん。凪は乗っ取られているだけかもしれませんし、あるいは彼自身が何かを企んでいるかもしれません。この辺りは今後のお楽しみとしていた方がよいでしょう。

マーヤは今回の戦いを通して凪が自分にとって大切な存在であることを再認識しつつも、一旦凪(ゾキ)と共に帰って行ったので現状どうなっているか不明です。11巻でその辺りの心情も描かれるでしょう。相変わらずこの凪とマーヤは最後まで楽しみを残してくれていますね。割とドキドキしてしまいます。

アイラちゃんは、龍介との仲が最終的にどうなるか……は置いておくとして、4巻22Pでおばあさまが言っていた「真の力」が今から発揮されたりするのかどうかが気になるポイントではあります。あと、いつも首に下げていたクロスペンダントと狼の正体も分かったので今後更に活躍する機会があるかもしれません。頑張れサバーチカ!リコとの絡みがもっかい見たいぞ!

あと本当に余談ですが、表紙のアイラちゃんは本当にいいですね……思わず表紙だけで別の記事を書こうかと思ったほどでした。

リコに関しても少し掘り下げがありました。まず、ゴズの純制圧型戦闘兵との戦闘では、敵に回った凪に混乱する広瀬くんを立ち直らせるシーンがありました。これは6巻で死に怯えていたリコを叱るように励ました広瀬くんと、立ち位置をひっくり返した形になっています。森に隠れながらという構図も似ていますね。広瀬くんとの日々の中でリコも成長してきたことが窺えます。そしてハウス星がヤフマナフの属星という事実も判明。果たしてこちらの王に出番はあるのでしょうか。

ナイフの傷を負ってしまった大鳥先輩にも注目しておきましょう。ここは1巻の4話を想起させるシーンですね。あのときは広瀬くんに変わってほしくないという思いで怪我を負ったことを隠していましたが、今回は広瀬くんが変わっていく、成長していくために自分の怪我を隠してしまうという、反対の思いから同じ行動を選んでしまっています。しかも今度は治らない。小さな傷とはいえ首元と右の手の平ですし、これがどう繋がってくるか気になるところです。

 

以上で、10巻の内容をざっくりまとめてみました。言及していない部分も結構残っていますが、それに関しては後日別に記事を用意して、そちらで書いていきたいと思います。

それでは。

 

【追記】

ぼっち侵略10巻の詳細読解記事ができました。よければこちらもお読みください。

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