ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

ひとりぼっちの地球侵略第1話・第2話についてざっくり考えてみた。

 このブログを立ち上げてから何を書いたものか考えていたのですが、まずは1巻の第1話と第2話をまとめて取り上げるところから始めてみたいと思います。真面目に細かくやるととても長くなってしまうので、今回はざっくりと、ざっくりと読むことでこれからの展開を追っていく上で特に大事な部分を理解していけるようにしたいと思います。内容は大きく分けて「大鳥先輩はなぜ地球侵略しないのか?」「大鳥先輩にとって広瀬くんとはどんな存在なのか?」の二つになります。ではやっていきましょう。

 なお、このブログにおいて例えば(1:32:1)などというよく分からない数字が出てきます。これは(巻数:ページ:コマ数)をそれぞれ表しており、これに従って読めば私が現在どの巻のどのページについて言及しているのか一目で分かるようになっています。是非単行本をお手元に持ってご活用ください。

 

1:大鳥先輩はなんで地球侵略しないのか?

 まずはここから参りましょう。1巻の時点において、大鳥先輩は地球を侵略していると見えるような行動をほとんど起こしていません。3話と4話の話になってしまいますが、大体は広瀬くんの隣にいて何かしているか読書しているかです。地球侵略するのであれば早くやってしまえばいいのに、何で大鳥先輩は地球侵略をすると言いながら地球侵略らしい行動を何一つ起こさないんでしょうか。

 

 大鳥先輩が半年前に目を覚まし(1:89:1)、港に入ってくる宇宙人を倒すほかは広瀬くんと一緒にいるだけの生活を送るようになる前に、一つだけ起こした地球侵略らしい行動があります。物語の冒頭で広瀬くんを殺害し、その心臓を返してもらおうとしたのがそれです。大鳥先輩は広瀬くんから心臓が取り返せないと見るや、仮面を外して広瀬くんを仲間に誘っています。

 ここで注目したい台詞が二つあります。

(1:64:1)「大鳥希、青箱高校2年6組。その正体は「港」の管理者で、この星を征服するために送り込まれた侵略宇宙人。そして宇宙でただ一人のあなたの味方」

(1:35:3)「心臓は君の体に溶け込んで役割を果たしている。今「港」は再び開いている」

 一つ目から注目していきましょう。彼女は自己紹介において、「港」の管理者と名乗っています。「港」とは現時点では地球に宇宙人が入ってくるのを防ぐ壁のようなもので、開くと宇宙人が入ってくるものと大雑把に考えればよいでしょう。「港」が10年前に開いた際に宇宙船団が入ってきていることや、(1:29:1)「港」が開いた途端に偵察の宇宙人がやって来たことから推察できます。(1:67:4)また、オルベリオ星人はかつて地球にも住んでいたそうなのでこの港にはオルベリオ星人も関わっているのでしょう。あるいは管理することもできるかもしれません。(1:96:1)恐らく大鳥先輩が一人で地球に送り込まれた原因の一つも彼女単独で「港」を管理できるからなのでしょう。が、1巻においては彼女は見た限り「港」を制御できていません。少なくともゴズ星系の宇宙人達の侵入を許しています。侵略をしないまでも、開いたままでは他の宇宙人に侵入されてしまう「港」の管理すら行わないのは不思議です。

 そこで二つ目の台詞です。ここで大鳥先輩は心臓が役割を果たしていることと今「港」が再び開いていることを同時に語っています。1巻において心臓が果たしている効果は広瀬くんの傷を治す程度のものです。(1:44:1)入学式のシーンに注目してみましょう。大鳥先輩が目覚めてから広瀬くんの胸の傷が痛みだし、(1:11:1)最初の接触の時にそれが治ってしまったことを考えると、役割を果たす=機能し始めたのは大鳥先輩が触れた時と考えていいでしょう。(1:27:1)そして大鳥先輩はまるで心臓が機能し始めたのと「港」が再び開いたのが同時であるかのように呟いているのです。確かに広瀬くんめがけてゴズ星系の宇宙人がやってきたのは広瀬くんの心臓が機能し始めてからです。

 ということは、ここで心臓には「港」を管理する能力が備わっているのではないかという仮説が成り立ちます。心臓が役割を果たし始めたからこそ「港」が開いたとも考えられるのです。そう仮定すると広瀬くんの心臓を大鳥先輩が真っ先に取り返そうとしたのも納得です。そうしなければ「港」を管理できないのですから。しかし、結果として心臓は広瀬くんの体に溶け込んで同化してしまっており、しかも大鳥先輩が触れた拍子に機能し始めて「港」が開いてしまいます。つまり「港」を管理したいのにそれを制御するための心臓を取り返すことが不可能になり、しかもそれが勝手に機能して「港」を開いてしまったのです。この時点で大鳥先輩としては相当まずい事態であることが分かります。おまけに他の宇宙人にその心臓を狙われたり偵察に来られたりと散々です。

 となるとこの時点で大鳥先輩ができること、それは「港」を管理するための心臓=広瀬くんを守り、同時に「港」の偵察や心臓を奪おうとする宇宙人を倒し続けることしかないのです。これで今の大鳥先輩の状況にも説明がつきました。

 大鳥先輩がどうやって地球を侵略しようとしているのか、1巻の時点では判明していませんが大まかなことは分かります。地球に病原菌を持ち込ませないようにしていることから地球の環境を人間の文明を含めて破壊しようとしていないことは分かります。(1:87:4)ということは物的な破壊も起こさず地球を侵略するつもりなのでしょうが、地球人との文明差や「港」を開くことなどによってオルベリオ星人を上手く地球に大量に侵入させるつもりなのでしょう。その目的や具体的な方法は謎のままですが。

 いずれにせよ、地球侵略には広瀬くんの心臓がもつ「港」の管理能力が必要で、その奪還が不可能でかつ勝手に機能してしまっていることこそ、彼女が現在の状態に置かれている一因だと考えることができるでしょう。

 

2:大鳥先輩にとって広瀬くんとはどのような存在なのか?

 

 では、以上の要素を踏まえつつ今度は二人の関係に迫ってみましょう。大鳥先輩にとって広瀬岬一とは一体どのような存在なのでしょうか。

 冒頭。いきなり殺そうとしていますがこれについては先ほど説明した通り「港」管理能力を取り返すためです。これがないと地球侵略が始まりません。そして頓挫して、おまけに「港」が開いてしまいます。

 すると大鳥先輩は広瀬くんを仲間に誘い始めます。そうしなければ心臓を守れないので当然と言えるでしょう。

 それにしても大鳥先輩の仲間に対する考えは少し変に見えます。心配してもらったことに不自然な喜び方をしたり、(1:81:5)怪我を治してもらえたことを変に嬉しがったりします。これは一体どういうことでしょう。その答えはここの台詞に表れています。

(1:87:1)「私は一人でこの星に来たんだもの、本国では人らしい人と話したことないし…」

(1:87:4)「特に私は生まれた時からこの星に派遣されることが決まっていたから、病原菌を運ばないように他の人とも会わせてもらえなかった」

 

 仲間がいない、ということの説明にも思えるこれらの台詞ですが、「人らしい人と話したことない」「他の人とも会わせてもらえなかった」という部分に注目すると事情が変わってきます。

 つまり、大鳥先輩は生まれてこの方他人とまともに接したことがないとも考えられるのです。生活が機械によって管理されていることからそこである程度の礼儀や教養は身に着けられたのでしょうが、他人との触れ合いというものを体験したことがない。ここで言う他人とは恐らくオルベリオ星人のことなので、地球にやって来て地球人の中で生活しても、それは彼女にとって自分と同じ、対等な存在ではない。だから彼女はひとりぼっちであり、彼女の心臓を持った広瀬くんは地球で唯一と言える他人であり、仲間なのです。

 彼女は他人との触れ合いを経験したことがない以上仲間という概念もよく分かっていないことになります。すると先ほどの不自然な喜び方にも説明がつきます。あれらはつまり「仲間というのは自分に対してこんなことをしてくれる存在なんだ」と本当に一つひとつ驚いて、心の底からその現象に喜んでいるのです。怪我を治してもらった際の「へー、ふーん、ふふ」とは怪我を治してもらったという現象について大鳥先輩が把握し、理解し、喜ぶ様子を端的にまとめているとも言えるでしょう。

 さて、そんな大鳥先輩は広瀬くんを仲間に誘いますが断られてしまいます。そしてゴズ星系の宇宙人が広瀬くんを襲ってきたところを助け、そしてあの名台詞「二人で一緒にこの星を征服しましょう!」が出ます。問題はその後の台詞です。

 (1:59:1)「そしたらあなたのお願い聞いてあげる!この街のみんなだって守ってあげるよ。私は他の侵略者とは立場が違うからね」

 ここのお願いとは広瀬くんの祖父を助けるという意味なのですが、この直前で大鳥先輩は広瀬くんのお願いを断っています。その上で仲間になったら助けると言っているのです。つまり、ここの大鳥先輩はこんなにキラキラしていますがこれは広瀬くんを脅迫しています。彼女の言葉をひっくり返すと「仲間にならなきゃお前の祖父はここで死ぬし街のみんなも大勢犠牲になるがどうするかね?」 となります。こええ。更に恐ろしいのは、彼女には脅迫という意識がそこまでないことなのです。

(1:86:5)「誰かを大切に思う気持ちってよく分からなかったんだけど、今なら少し分かる気がする」

 ここでこう言っているのは他人と触れ合ったことがない以上誰かを大切にしたことも誰かに大切にされたこともないからです。大鳥先輩は本当に軽い気持ちで広瀬くんの目の前で自分の仲間になるか祖父を見殺しするか天秤にかけてみせたのです。それが広瀬くんにとってどんなに重いことか本気で分からないからこそ、仲間に誘う彼女は輝くように笑っていられたのです。

 さて、そんな彼女ですが実際に広瀬くんが仲間になってからは驚きの連続です。仲間になった広瀬くんに仲間とは何なのか実体験で教えられます。広瀬くんが大鳥先輩のことを心配し、助け、そして祖父のことを思い出して涙する様子から誰かを大切に思う気持ちも少しだけ理解できるようになりました。そこから重要になるのが90Pからのやり取りです。

 ここで広瀬くんは「俺にできることはあんたの仲間になって、みんなを守ってくれるといった あんたの言葉を信じることしかないだろう」と言います。(1:90:6)これは大鳥先輩の側にして見れば「もしも他に何か方法があったらお前の仲間になんかならなかった」という意味にも受け取れます。大鳥先輩にも心臓を守るという目的はありましたが、そこに初めて仲間ができたという喜びもまたあったのです。しかし広瀬くんにしてみればみんなを守るために仕方なく仲間になるしかなかった。そういう広瀬くん側の事情を大鳥先輩は初めてちゃんと理解するのです。大鳥先輩は「嘘かもよ。守らないかもしれない」とかまをかけてみます。するとその時は心臓を破って死んででもみんなを守ると広瀬くんは言い放ちます。(1:91:1)

 心臓は大鳥先輩が地球侵略するために欠かせないものであると同時に、二人が仲間であることの証。その心臓を破壊するということは、大鳥先輩の存在意義でもある地球侵略が失敗すると同時に、彼女がまた地球でひとりぼっちになってしまうことを意味します。大鳥先輩は落胆します。仲間ができたことに喜びはしたけれど、それは約束を破れば簡単になくなってしまうものなのだと。

 しかし。そこで。広瀬くんが言うわけです。

(1:91:3~4)「あんたは身を削ってじいちゃんを助けてくれた……信じたいんだ」

 広瀬くんは祖父のために、大鳥先輩は地球侵略のために。それぞれ別の目的はあっても、命をかけて約束を守ってくれた相手のために自分も命をかけて相手を信じる。仲間とは互いに命をかけてでも相手に心から報いることだと、大鳥先輩は生まれて初めて知るのです。自分のために命をかけてくれるかけがえのない仲間を得られたという感動がどれほどのものだったのか、92Pの表情を見れば敢えて書く必要もないでしょう。本当かっこいいですねぇ、広瀬くん。

 一夜開けての二人のやり取りはここまでの流れをまとめたものになっています。大鳥先輩は実際の心臓ではなく命をかけて仲間になるという決意を貰うことになりました。(1:102:3)握手の直前、「地球侵略のために!」と「宇宙人から家族を守るために…」と言う二人をそれぞれ逆に傾かせています。(1:103:5~6)目的は違っていても、互いのために命をかける。その決意を二人が新たにした瞬間でもあります。

 大鳥先輩にとって広瀬くんは地球侵略のために不可欠な心臓を持つ人間。それと同時に、自分のために命をかけてくれる、生まれて初めて得たかけがえのない仲間なのです。

 

・まとめ 

 えー。ざっくりと言いながら5000文字に迫ろうとかという文字数になってしまいました。全然ざっくりしていませんね……。時間も結構かかってしまったでこれから工夫が必要ですね。考えます。

 さて、これ以外にも1巻で話せることは山ほどあります。細かい演出に関する話までするとどれだけ文字数をかければいいのか分からなくなりますが、そちらはまた次回にするとしましょう。この文章を通して皆さんがぼっち侵略の面白さを再発見して、ますます好きになって頂ければ幸いです。それでは。

 

追記:第3話と第4話のざっくりまとめ、完成しました。下のリンクからお読みください。

thursdayman.hatenablog.com