ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

ひとりぼっちの地球侵略1巻はどのようなお話なのか?

こんにちは、さいむです。

今回書くのはぼっち侵略1巻で一体この作品についてどこまでのことが分かるのか?ということです。

現在私はひとりぼっちの地球侵略感想ブログ大会というものを開いていまして、その影響もあって色々とぼっち侵略の感想記事を読んでいるのですが、実はぼっち侵略について「1巻だけだと分かりにくい」という感想が結構多いのです。

ぼっち侵略がシンプルではない一面も持った作品であるとは思ってます。読むことで出てくる答えそのものは割と素直なものですが、そこに至るまでの道程が中々に複雑です。ここら辺は今までのざっくりまとめや紹介記事でも書いてきたことではあります。

 

thursdayman.hatenablog.com

 

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それはそれで読み込む楽しさがあるのですが、一方でぼっち侵略1巻で作品全体のどこまでが語られ、どんな方針が見え、どんな面白さを味わえるのか、ここら辺を総合して何か書いたことって今までなかったんですよね。なので今回は1巻でぼっち侵略をどこまで味わえるのか。それについて書いてみたいと思います。要するに1巻全体を読んだ人向けの感想ですね。

 

とは言え、流石にもう一回解説を挟むのもしんどいので、できれば上の記事二つ、あるいはざっくりまとめの方だけでも先に読んでからこちらの記事を読んで頂けると助かります。では参りましょう。

 

・ひとりぼっちの地球侵略1巻は解読できるよう設計された「分かりにくさ」がある。

 

さて、上の記事の内容を踏まえて書くのですが、正直初見で理解するのは厳しいことを明確に意図してやっているとは思います。まず一切説明の無い<「港」の管理者>(64P)というキーワードに着目しないといけませんし、その後広瀬くんの体に心臓が溶け込んでいることと港が開いていることを並列して語っているという点(35P)に注目しつつ、広瀬くんが宇宙人に襲われたときの状況(44~48P)や大鳥先輩が何よりも真っ先に広瀬くんの心臓狙ったこと(19P)をそこに繋げないと心臓と港の関係性に辿り着くのは難しいものがあります。

ここまで来てもまだ第一段階。これにより、普通に読んで理解できる「宇宙人が自分の心臓を持っている地球人と仲間になって地球侵略をする話」というストーリーラインに補正をかけて「宇宙人が地球侵略をするため(港を管理下に置くため)に必要な自分の心臓を、現在所持している地球人から奪還しようとしたものの失敗したため代案として彼を仲間にして地球侵略するお話」という形に直し、更に故郷で誰とも会話さえしたことが無く広瀬くんが正真正銘始めて出会った仲間であったこと(87P)も押さえます。

こうしてやっとぼっち侵略1巻の大体の説明がつくようになります。最低限必要な情報が置いてあるページだけ追ってみても情報を並べる順序と実際のページ運びが全くバラバラになっているのです。一読目でこれらを全て頭の中で並び換えて何が起こっているのかちゃんと把握するのは相当に難しいと思われます。一方で整理さえすればきちんと形になる上にそれでほとんどの描写の説明をつけられることを考えても、これらの情報配置は意図的に行われたことが分かります。

『ひとりぼっちの地球侵略』は小川麻衣子先生にとって初めてのオリジナル連載作品でした。作家としての実績が少ないため、人気が出なければ早期に打ち切られていた可能性もあります。あるいは、もしもそうなったときに備えて、小川先生は大体の絡繰りが1巻でも分かるような「仕掛け」を施したのかもしれません。それはもう作者本人にしか分からないことなのかもしれませんが、いずれにせよこれは普通に読んでいる上で分かってもらえることを期待して施したものではない可能性が高いのは確かだと思います。ぼっち侵略1巻が分かりにくいのも恐らくこうして隠されている情報が多いまま、話が進んでいくからではないでしょうか。

しかし一方で、こうしてキャラクターの心情や作品の核心に関わる大事な情報をちょっとやそっとでは分からないように隠しつつこっそり置いておく技術、これは本当に巧みで素晴らしいと私は思います。物語そのものの面白さとは別個のものであるとはいえ、何度も何度も読み返して手がかりを掴み、そしてやっと答えを得たときの喜びとその技術の凄まじさに対する戦慄は今でも手に取るように思い出せます。これが本人の手違いでそうなったとしか思えないものならば作品の不備とも言えたでしょう。しかしぼっち侵略におけるそれは確実に作品がそうなるべくして施されたものです。そしてそれ故にちゃんと理解し楽しむことができる。作中に読みこめる描写を取り入れつつその答えを作品側がちゃんと作中に置いておいてくれる、そういう意味ではぼっち侵略は親切な作品なのです。ならばこれはひとりぼっちの地球侵略の面白いところ、魅力の一つとして挙げて良いのではないか、私はそう考えます。

ぼっち侵略は普通に読んでも面白い作品です。それは紹介記事のところでも書きました。しかし、何度も読み返してキャラクターの心情や意味深な描写について理解できるともっと面白いと私は改めて思います。その技術自体に対する感動でもそうですし、それによってより色鮮やかになるキャラクターの心情への没入という意味でもそう感じます。是非そういう楽しみを、ぼっち侵略で味わってもらいたいと私は思います。私がそうであったように。

 

・ぼっち侵略は1巻以降どのような方向に向かっていくのか

 

 まぁハッピーエンドで終わるんじゃないでしょうか。

というのが1巻でのざっくりした答えですね。

勿論ざっくりしたことを書くためだけにこれを書いているわけではないので事細かく説明したいと思います。私がこの作品にどう終わってほしいかという願望も幾つか混じっているのでそこら辺はご容赦。

まず、ぼっち侵略がどう終わるのか。

1巻で分かるわけないだろうとも思われるかもしれませんが、一つ確かな手がかりがあるのです。それは「港」。ぼっち侵略における諸問題の大体は港を何とかすれば解決するのです。

1巻において「港」というものが何なのか、それに関する説明はあまり多くありませんが、分かるところを列挙すると、

・昔オルベリオ人が地球にいた頃に作ったもの。大鳥先輩が管理者であるのもそのため。

・宇宙人ないし宇宙船を地球に入れさせない効果がある。10年前に何らかの理由で一度開けられている。その際は宇宙船団が押し寄せ、広瀬くんは瀕死の重傷を負った。

・大鳥先輩が管理者だが、その管理機能を有する心臓は現在広瀬くんのものであるため実質干渉不可能なまま港が開いてしまっている。開いた港からは敵の宇宙人がやって来るため、大鳥先輩はこれを倒して回っている。

・オルベリオの地球侵略に不可欠なものである。

大体このようになります。一見少なく感じられますが、実はこれだけ分かっていればぼっち侵略の終わり方についてそれなりに検討はつけられるのです。

大鳥先輩が地球侵略するためには港の管理が必要、1年前、そして現在他の宇宙人に地球を狙われているのは港が開いたから。この二つだけでも港さえ制御下に置ければすぐに解決できます。地球及び地球人にオルベリオ人が悪さをしないという確証が得られた上で広瀬くんの心臓(ないしそこに宿っている港の管理機能)が大鳥先輩の元に戻るなりすればそれでこの状況は解決してしまうのです。なのでまぁ、そう言う意味では事態は割と単純だと言えます。

地球を超えて話が外宇宙まで行ってしまうのではという考えもあるかもしれませんが、主人公である広瀬くんの夢が「祖父の喫茶店を継ぐこと」であり地球侵略に協力する理由が家族を守ることである以上、人と場所によって恐らく松横市から離れて話が進むことはないと考えられます。そうなるとやはり地球、特に松横市を舞台に話が進み、最終的に港か何かで再び地球を閉じた状態にする他に物語の確実な終わり方はないように思われます。地球人と宇宙人との文明差がかけ離れすぎているような描写も見受けられますしね。

 

次に、大鳥先輩はどうなっていくのか。

地球侵略が成功するにせよ失敗するにせよ、大鳥先輩は地球に残るしかないのではないかな、と私は思っています。

先に書いたように港を閉じてしまうしか問題解決の方法がないのもありますが、大鳥先輩というキャラクターの設定にも理由はあります。

ここでちょっと、ウルトラマンを例にして考えてみましょう。昭和シリーズのウルトラマンはそのほとんどが故郷に帰ってしまいます。これは何故なのでしょうか。

1.故郷がある。

そもそも故郷がありそこに自分を知っている人がいるなら帰るのは自然の成り行きです。

2.銀色のデカイ巨人なので明らかに人類社会に馴染めない。

我々の日常生活にはあまりにも非現実過ぎて、自然と排除されてしまいます。

3.地球を守り続けるという考え方はいつか失敗する可能性を常にもつ。

「自分が失敗するまで、力尽きるまで」という前提の上に成り立っているのでそりゃあいつか失敗する時は必ず来ます。敗北したら地球を去るということもあり得るでしょう。ずっと成功しなければならないタスクはいつかどこかで失敗する可能性を確実に持ち続けるのです。

 

大体ざっとこんな感じです。宇宙人というのは常に何かしら排除される理由が付き纏うわけです。では、大鳥先輩の場合はと言うと、実はこれが案外抜け道を通っているのです。

1.について:故郷があれば人はそこに帰る。当然の成り行きです。しかし、もしもそこに自分が知っている人が誰一人いないとしたらどうでしょう。大鳥先輩はオルベリオでは機械によって育てられ、誰とも会わせてもらえなかったと話しています。すると大鳥先輩にとってオルベリオは故郷ではあっても自分を待つ知人はいないということになります。それに88Pのモノローグで彼女は死ぬまで一人で任務をこなすということが示唆されています。地球侵略がどのような性質のものであるかはまだ分かりませんが、大鳥先輩が港の管理者でもあることを踏まえると、彼女はもう二度とオルベリオの地を踏むことはない可能性の方が高いでしょう。例え帰っても「自分の知る」仲間もいないのですから。

2.について:どっからどう見ても外見は地球人です。本当にありがとうございました。

3.について:地球侵略が成功するまで頑張るのが任務である性質上、成功するまではずっと地球に居続けることになります。そういう意味では地球を守るという任務よりも地球に居続ける可能性は自然と高くなります。いつか成功するまで挑戦し続けるというタスクは先の失敗が一度も許されないタスクよりも長持ちしやすいのです。

 

と、このようにオルベリオに帰るよりも地球に最後まで残ることになる可能性の方が設定上ずっと高いのです。オルベリオの地球侵略が地球や地球人をみやみに傷つけるような性質のものではないらしい以上、大鳥先輩はこの先地球で地球人と共に生きていかなければならなくなるでしょう。既に青箱高校という人間社会の一部に組み込まれていることからもそれは容易に想像できます。さて、そうなると取れる道は孤立か帰属かの二つです。彼女がどちらを選ぶのか。

その答えは実はもう出ています。そう、広瀬くんです。彼が彼女に対して「お前はもうひとりぼっちじゃないんだ!!」と叫んだあの瞬間にこの作品の方針はほぼ決定づけられています。あの一言によって大鳥先輩は孤独からは解放されているのです。地球人であり松横市という土地で生きていくことを目指している広瀬くんと共に歩むのなら、彼女もいずれはその流れに組み込まれ、それを少しずつ受け入れていくことでしょう。ぼっち侵略は「たった一人で育ち他人というものを知らないままに死ぬかもしれない任務に就いた宇宙人が、地球人との出会いを通して少しずつ他人や仲間といった概念を理解し成長していく物語」なのです。そして大鳥先輩の成長が広瀬くんによって裏付けられたものならば、彼女はきっと地球人と共に生きていける道を選べるようになることでしょう。

 

・まとめ

 

ここまで色々予想立ててきましたが、特に後半の部分は先に書いた通りやはり私がそういう作品が好きという願望の面が強く出てはいます。ただ今までの記事でも言及してきた通り、ぼっち侵略が大鳥先輩に救いの道を設定面でも物語の面でもキャラクターの面でも周到に用意していることは確かです。大鳥先輩はハッピーエンドになるルートが確実に用意され、そして1巻の時点では広瀬くんの助けによって彼女はその道を着実に進みつつあります。このまま作品の方針が変わらないのであれば、二人には幸せな未来が待っているのではないかと、私はそう考えています。

紹介記事で書いた私がぼっち侵略を好きになった理由は、初めて読んだ体験を思い出せるままに書いたかなり衝動的なものでした。今こうして1巻のあらゆる情報を踏まえて私がこの作品を好きだと言えるのは、ここまで巧みな設定や描写が盛り込まれながらも、それでもやはりそれらがハッピーエンドになるための道をきちんとズレることなく舗装しているからだと言えます。ここまでしてでもぼっち侵略は幸せになるための希望の道を歩み続けているのです。それが必ずしも物語の正解であるとは限らないのは前にも書いた通りですし、それでも私はそういうお話が好きということもやはり書きましたから繰り返しはしません。ただ、ぼっち侵略はそれほどまでに親切な作品であり、だからこそ読みたいと思えるとは付け加えたいと思います。好みは必ずあるでしょうが、できればこの作品を色んな人に読んでもらいたいと私は思う限りです。

以上、1巻全体読んでの総合的な感想でした。皆さんがこれを読んでぼっち侵略の新たな魅力を発見することができれば幸いです。ではでは。