ぼっちQ&A!~小川麻衣子作品感想ブログ~

『ひとりぼっちの地球侵略』や『魚の見る夢』等、漫画家の小川麻衣子先生の作品について感想を綴ったブログです。

ひとりぼっちの地球侵略って、そもそもどんな作品?どんなところが面白いの?

こんにちは、さいむです。

今回は、ひとりぼっちの地球侵略がどう面白い作品なのかという話です。

つまり宣伝ですね。

……いや、実のところぼっち侵略についてはずっと研究ばかり行っていまして、ろくに宣伝らしい宣伝ってしたことがなかったんですよ。

折角ここまで色々と感想を書いたきたことですし、私も挑戦してみようと思ったわけです。

では行ってみましょう。

 

・そもそも『ひとりぼっちの地球侵略』ってなに?

『ひとりぼっちの地球侵略』は小川麻衣子先生によるSFボーイミーツガール漫画。2012年3月より『ゲッサン』で連載されています。略称は『ぼっち侵略』です。

www.youtube.com

※2015年9月現在8巻まで発売されています。

第1話試し読みのリンクはこちら。

csbs.shogakukan.co.jp

作品の粗筋はこんな感じです。

 

主人公広瀬岬一は高校の入学式の朝、仮面を被った謎の少女に校門で突如命を狙われる。事なきを得た岬一だったが、その後胸にあった古傷が消えていることに気付き屋上で少女を問い質す。彼女は大鳥希と名乗り、自分が宇宙人であること、そして岬一の胸には10年前彼が瀕死になった際に埋め込んだ自分の心臓があることを明かす。君はもう自分と同じ宇宙人なのだから地球侵略をしようと誘う大鳥を、岬一は拒絶する。彼には祖父の経営する喫茶店を継ぐという夢があったからだ。帰宅して祖父の手伝いを始める岬一。しかしその夜別の宇宙人が出現、祖父を体内に呑んでしまう。恐怖で震える岬一の心臓へと迫る宇宙人。そこに大鳥がふらりと現れ、仲間になるのなら祖父を救いこの街の住民も守ってあげると笑顔で告げる。岬一が怒りを覚えつつも承諾すると、大鳥は一気に宇宙人を圧倒していく。お前は何者だと問う岬一に大鳥は答える。宇宙でただ一人のあなたの味方であると――。

 

 

タイトルや粗筋だけだと一見重い話にも思えますが、実際ページを開いてみるとその柔らかい絵柄のおかげでスラスラと読み進めることができます。少年少女の成長が大変丁寧に描かれていて、まさに少年漫画といった感じです。地球侵略の全貌やヒロインである大鳥先輩と広瀬くんの過去等、興味深い謎もしっかりと練り込まれていて読み応えもある作品になっています。

 

・ぼっち侵略の魅力とは何か?

ひとりぼっちの地球侵略の最大の魅力は、何よりも作品から伝わって来るハッピーエンドに向かおうとする強い意志です。広瀬くんや大鳥先輩が本当に幸せになるために前に進もうとする力強さがあるんです。

ちょっと1巻の最後から具体例を持ってきましょう。ここは私が初めてぼっち侵略を読んだときにとても驚いたシーンでもあります。

1巻の最後で、大鳥先輩は広瀬くんに内緒で敵の宇宙人と戦って大怪我をしていたことが明らかになります。仲間になった広瀬くんに自分の事情を打ち明けられず、一人で抱え込もうとしてしまう大鳥先輩。広瀬くんの脳裏を様々な言葉が駆け抜けていきます。

 

全部一人で抱え込もうとして           

人に頼ろうとも考えないくせに

人恋しいだとか              違う俺が言いたいのは

馬鹿だなぁ

そんなんだからお前は           こいつに言ってやりたいのは

そんなんだからずっと           そんな残酷な言葉じゃない

――なんじゃねえの?           もっと救いのある

                     救ってやれる言葉

そして広瀬くんは叫びます。

「お前はもうひとりぼっちじゃないんだ!!」

広瀬くんは大鳥先輩を救ってあげられる言葉を選んだのですが、最初に浮かんでいるのは彼女を責める言葉なんですよね。それでもそれを遮り、乗り越えるように大鳥先輩を救って、共に歩んでいくための言葉を選んでいる。これこそがぼっち侵略のぼっち侵略たる所以なのです。

そもそも先ほどの粗筋でも触れたように、ぼっち侵略の設定や世界観はそこまで明るいものではありません。敵の宇宙人は攻めてきますし、広瀬くんの家族も襲われています。不安や恐怖の影がそこかしこに付き纏っている。重要なのは、その影に怯える状況に留まろうとしないことなのです。後ろ向きな空気や、ネガティブな感情に浸ろうとせず前に進んでいく様にこそぼっち侵略の魅力があるのです。

一つポイントなのは、そういった負の感情に浸ることは決して間違いやマイナスばかり生み出すわけではなく、一つの選択として許されることでもあるということです。そういった姿が読んでいる我々の心を打つことだってあります。しかしぼっち侵略はその選択肢の存在は意識された上でそれを選ばない、そこに耽溺しない作品なのです。

広瀬くんにはあの時大鳥先輩に酷い言葉をかけてしまう選択肢も許されてはいたんです。全てでなくてもいい、救いの言葉をかけながら少しでも彼女を責めることはできた。そうすることで彼なりに満たされるものも何かしらあったはずです。

それでも彼は選ばなかった。前に進むことだけを見据えたのです。ここには許しの省略があります。自分に嘘をついていた大鳥先輩を許すか許さないか、そこで迷うのではなく、その選択を超えて更に前に進む。幸せになるための、希望に繋がる道を最短距離で歩む。これが恐らくぼっち侵略に通底する精神であり、私がこの作品をもっとも好きになったポイントです。

これはあくまで一つの選択に過ぎません。そうでない答えを進む作品は無数にありますし、そちらの方が良いという方も沢山おられると思います。しかしこういった答えを求められていた方、またそういう道も見てみたいという方は、是非この作品を1巻だけでも読んでみてください。私のように望むものがきっと手に入るはずです。

 

・終わりの補足と宣伝

さて、ぼっち侵略の最大の魅力については大体以上です。が。あともう一つ、私がぼっち侵略を好いているポイントがあります。それは、読み返す度に新しい発見を幾つも見つけられるほど細部が非常に作り込まれているところです。先ほど柔らかい絵柄のおかげでスラスラ読めると書きましたが、一方でその絵柄に似合わずぼっち侵略は非常にディティールが細かく、一度読んだだけではとても全ての描写や情報を拾いきれないほどなのです。今回は紹介に留めるのでそちらに関して具体的には触れませんが、もし買われたら一度と言わず何度も読んで頂きたいと思います。最初は分からなかったキャラクターの心情の機微や細やかな設定等、ぼっち侵略の世界を更に広げるような発見がきっとあるはずです。1巻だけでもお腹一杯になること必至ですのでお楽しみに。

ちなみに私も自分なりに考えたものをブログにまとめているので、ちらっと読んでみると多少の助けぐらいにはなるかもしれません。

thursdayman.hatenablog.com

 

以上、補足と宣伝でした。この紹介記事を読んだあなたがぼっち侵略に興味を持ち、実際に買ってその面白さに触れることができれば幸いです。それでは。