ぼっちQ&A!~小川麻衣子作品感想ブログ~

『ひとりぼっちの地球侵略』や『魚の見る夢』等、漫画家の小川麻衣子先生の作品について感想を綴ったブログです。

ひとりぼっちの地球侵略9巻についてゲッサンを読みつつ先取りで考えてみよう!(ネタバレ注意。ゲッサン必読)

<ネタバレ注意!>

ゲッサン2015年7~9月号をお読みの方のみこの先へお進みください!!ぼっち侵略未単行本分の内容に関するネタバレがあります!

 

 

皆さんこんにちは、さいむです。

 

コミケの季節ですね、大変暑いです。

さて今回は、ぼっち侵略9巻の内容について考えてみたいと思います。と言っても発売は11月になるでしょうし、正確に言えば「ぼっち侵略9巻に掲載されると思われる、ゲッサンに掲載されている最新の内容」についてとなります。8月16日現在3話分ですね。丁度折り返しの時期です。では行ってみましょう。

 

・広瀬くんをあらゆるバイアスを取り除いて見た時に、彼は他の地球人の男子と比べてどうなのか?

9巻のテーマを先回りして考えるのならこうなるのでしょう。8巻の内容を軽くおさらいしながら解説します。

thursdayman.hatenablog.com

8巻において、大鳥先輩は広瀬くんと大鳥先輩を繋ぐ絆であった心臓が無かった場合の事態をマーヤに見せられた悪夢によって体験。それによって、広瀬くんをオルベリオの魔法のキーとなる視覚(文字)や聴覚(言葉)に頼らない匂いによって認識するという行動をとりました。これはつまり、オルベリオ人や地球侵略の仲間、心臓と言った彼女が元々もっていたあらゆるバイアスを取り除いて、広瀬くんを本当に広瀬くんのままに捉えられるようになったということになります。

しかしそれは裏返すと、彼を他の地球人となんら変わりない存在として見るということでもあります。それは以前の彼女にとっては心底どうでもよかった存在です。果たして大鳥先輩は広瀬くんを他の地球人と比べても大事と思えるのでしょうか……。……まぁ、ざっとこんな感じになると思います。あと2話でまだひっくり返るかもしれませんが。

さて、具体的に作品を読んでいきましょう。修学旅行の話題が上がるところから話は始まります。ここで広瀬くんがオトナの雑誌に手を伸ばしているのも先々の展開の布石と言えるでしょう。流石にうん、女の子苦手なままはしんどいと思うんだ。5巻のプールでもそういう描写はありましたがダメ押しですね。

この時点での大鳥先輩は修学旅行に行けることが嬉しくて他のことを気にかけていないレベルの浮かれっぷりです。楽しそうだなぁ……。

修学旅行に行って、いよいよ先に示したテーマを進めるためのキャラクター、針山が登場します。背が高くハンサムで成績も良く女の子に積極的。人間比較し過ぎるのもあまり良くありませんが、大雑把に広瀬くんの上位互換と言っても差支えないでしょう。彼は広瀬くんのことを認識しつつも大鳥先輩にアタックします。以前の大鳥先輩なら針山くんは地球侵略とは無関係の人間なので簡単に断れたでしょうが、広瀬くんを普通の男の子として見るようになったも同然の今だからこそ彼の言葉は大鳥先輩に刺さることになります。8巻以前にしかけなかったのは運が良かったとも言えますし、針山の観察眼が良かったとも言えるでしょう。果たしてこのアタックに対して大鳥先輩がどう返すのか。先が楽しみです。まぁ振ると思いますが。

ここで押さえておきたいのは、初日の夜更かしの一幕です。堀井さんがアイラちゃんに龍介との関係について色々聞くところから始まりますが、ここの質問、よく読むと大鳥先輩が今まで色んな人に広瀬くんとの関係について尋ねられたときと似ているんですよね。付き合っているわけじゃないと否定していますし、大鳥先輩から打ち明けたことではありますがキスもしていますし。ここの質問が似通っていることで大鳥先輩にもこの内容が刺さり得る状況が実はひょっこり作られています。

そしてこの一言。「付き合うなんてごまかした言葉だよね。みんな恋人になってもらいたくて必死なんだね。」さて、大鳥先輩が広瀬くんと恋仲になりたいのかどうかは現段階ではまだ分かりません。しかし4巻の過去編等から、ひとりぼっちで育ってきた彼女が一緒にいられる誰かを求めているのは分かります。広瀬くんを仲間にしたのは地球侵略において心臓が重要な役割を果たすからという理由もありますが、そこに一緒にいられる誰かが欲しかったからという理由がなかったわけではありません。所謂「暇つぶし」というやつですね。そして物語が進むにつれ地球侵略という目的は実質的に消滅しつつあります。そうなると二人はどういう関係になるのでしょう。一緒にいられる誰かが欲しいという願いと、地球侵略という目的。7巻で後者が剥がれ落ちて以降、前者を明確に言葉にする何かを大鳥先輩はまだ発していません。地球侵略が嘘だったわけではありませんが、それが形骸化した今、”地球侵略の仲間”という言葉はごまかしであるとも言えます。だから針山に付き合っているのかどうかを問われた時に、2巻や3巻のときのように「暇つぶし」や「仲間」という言葉が使えなかったのです。最後まで残っていた心臓というバイアスも取り払われた今こそ、二人を結びつける新しい言葉が必要になっているのでしょう。それはどのような言葉なのか、はたまた広瀬くんと大鳥先輩のどちらから出てくるのか。注目したいところです。

 

あともう一つ気になるのは、大鳥先輩の目に「松横市の外の世界」はどのように写っているのか、という部分。大鳥先輩は修学旅行を楽しんではいますが、一方で松横市の外の景色については何やら思うところがある様子。新幹線のときも乗り物としての速さだけでなく何やら流れていく風景を気にしていたようにも見えますし、初日の夜に広瀬くんと会話をしながら、京都の夜景を眺める際に何とも言えぬ切なそうな表情を浮かべています。今まで松横市でしか暮らしてこなかった大鳥先輩。オルベリオでは白い部屋から外に出たことが無く、地球に来ても松横市にいるばかりだった彼女に、外の世界がどのような刺激を与えるのか、気になるところです。

 

さて、9巻に関して抑えておきたいところはざっとこんなものでしょうか。アイラちゃんやマーヤの京都を満喫する様子や、これを期に暗躍しようと何やら動いている凪など見どころは沢山ありますが、あと2話でどうなるか、楽しみです。ではでは。

 

※追記。ひとりぼっちの地球侵略9巻発売に伴い単行本全体の感想・まとめを書きました。続きはこちらからどうぞ。

thursdayman.hatenablog.com