ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

ひとりぼっちの地球侵略8巻をざっくりまとめてみた。

こんにちは。さいむです。今回はひとりぼっちの地球侵略8巻の内容についてざっくりまとめて振り返ってみたいと思います。

広瀬くんと大鳥先輩の絆が心臓一つに絞られていったのが7巻なら、8巻は「ならその唯一つの絆である心臓がもしもなくなってしまったらどうする?」という巻になります。今までよりも既刊の内容を一層踏まえた上で進む巻となっており、その分時間軸的にはそこまで話が進んでいません。が、しっかり読まないと見落としてしまう部分もあるので、そこを重点的にざっくりまとめていきましょう。

・心臓という唯一の絆

まず前半の2話分から。7巻のお浚いに近い内容が展開されます。地球侵略という使命やオルベリオ人こそが自分の仲間であるという先入観から少しづつ解放された大鳥先輩。広瀬くんが心臓と一体化しつつあるのもあって、心臓を二人の繋がりの在処として認識するようになっています。1巻の時点では心臓を持っていたのが広瀬くんだったから、という理由で仲間になっていたため、広瀬くん個人には然したる思い入れはありませんでした。しかし今はそれが逆転し始めており、「心臓を持っていたのが広瀬くんでよかった」という考えに変わりつつあるようにも読めます。そんな大鳥先輩のために自分は何ができるか、広瀬くんは考えた末に松横大祭りの後、心臓を一生大切にすると先輩の前で誓います。広瀬くんも1巻の頃であれば大鳥先輩の心臓なんてうっとおしく思っていたかもしれませんが、先輩の過去を知り、内面を理解していくことで、ここまで彼女のことを受け入れられるようになりました。見た目にも美しいですが、二人の成長の過程を踏まえて読むと一層良いシーンです。

・ヘントゥーリオ強襲

そんなときにユーシフト族が登場。広瀬くんとリコは善戦しますが、隙をつかれて広瀬くんが心臓ごと乗っ取られてしまいます。大鳥先輩が駆けつけるも、街ごと攻撃しようとする相手に苦戦を強いられます。ついさっきまで広瀬くんと自分との唯一の絆だったものが、今は自分や街を攻撃するために悪用されている。大鳥先輩にとってとても辛い事態だったでしょう。このまま戦っていたらあるいは先輩はやられていたかもしれませんが、今度はそれを見物していたマーヤが凪に煽られ乗せられる形で先輩をマーヤの空間に閉じ込めてしまいます。ここに関してはまた後で言及するので、先に広瀬くんの方に話を移しましょう。
闘う相手がいなくなったことで意識が活性化した広瀬くん。ユーシフト族のヘントゥーリオから意味ありげなことを次々言われて混乱するばかり。まぁここら辺の設定は今の段階で無理に考えていっても推測以上のものにはならないでしょうから、慌てて飛びつかずのんびり見ていきたいですね。それはさておき、広瀬くんは心臓を貰い受けると言ったヘントゥーリオに全力で抵抗します。今まで広瀬くんは1巻で家族を守るために大鳥先輩に協力し、6巻ではリコを守るために闘ってきたんですが、ここでは大鳥先輩からもらった心臓を守るため、自分のために戦っているんですよね。自分が大切にしたいものを守るための戦いであることに変わりはありませんが、ここで広瀬くんは初めて自分のためだけの戦いをしているのかもしれません。「俺はハコじゃない!広瀬岬一だ!」という叫びもそれを表したものなのでしょう。
そんな広瀬くんをパックリ呑み込み、心臓を目前にしながら、結果として自滅してしまうヘントゥーリオ。暴走状態になった広瀬くんはまっすぐ大鳥先輩を救いに行きます。これ、マーヤの言う通りどっちの仕業なのかいまいち判別がつきませんね。広瀬くん一人で部屋を見つけることはできないでしょうし、ヘントゥーリオでは心臓を扱いきれなかったので、広瀬くんがヘントゥーリオに乗っ取られた状態の体を逆に無意識化に利用するという、共同作業のような形になっているのでしょうか。
ただ、ここで広瀬くんが取り返そうとしているのはあくまで心臓なんですよね。今は広瀬くんの中で溶け込んでいるとはいえ、元は大鳥先輩の肉体の一部なわけですから、心臓を助けたい一心がその延長線上にある大鳥先輩も助けることに繋がったのでしょう。体を乗っ取られた広瀬くんがタタカエというヘントゥーリオの言葉に半ば同調する形で戦闘していたのを見ると、心臓を取り返すという言葉をヘントゥーリオに乗っ取られた体が無意識に忠実に実行した結果がこうだったとも考えられます。
一方、見えるはずがない→触れられるはずがない→開けるな!!やめろー!!の三段落ちで完全敗北したマーヤ。凪に憑いたものに乗せられてこの最後は逆に同情すらしてしまいます。ここまで優位に立ち続けてきた彼女が初めてコテコテにやられてしまうので一層そういう気持ちになるというものです。色々準備してきたのに全部失敗に終わってしまいました。
戦闘が終わった後も大鳥先輩は泣いています。唯一の絆だった心臓をあんな風に利用されて、しかも後述する夢も見せられたのだから無理からぬ話でしょう。よく考えると先輩が広瀬くんの前でここまで取り乱して泣く様子を見せるのは1巻以来かもしれませんね。それでも、広瀬くんが約束を守りぬいて自分を助けてくれたのが救いだったかもしれません。

・マーヤが大鳥先輩に見せた夢の正体

さぁ、恐らく8巻の中で一番読むのが大変なシーンがやってきました。第39話『交錯』冒頭、大鳥先輩がマーヤに見せられた夢の夢を見ているシーンです。……何か変な書き方ですが一応これで合ってるはず。暗い通路を歩かされてはマーヤに突き落とされて、入学式で広瀬くんが自分を知らんふりする場面を見せつけられる。その繰り返しです。マーヤは「広瀬岬一が大鳥希を知らない世界」と言っていましたが、実はこのシーンに関してはその説明は十分なものではありません。何故なら、入学式の段階では広瀬くんは大鳥先輩のことを覚えていないからです。それどころか、本来は大鳥先輩がここで心臓を取り返しに広瀬くんを追いかけなければいけないのです。しかし大鳥先輩はそうしません。ただ、あのとき隣にいたスガワラの代わりに古賀さんが広瀬くんを連れて去ってしまうだけです。これの何が先輩にとって苦痛だったのでしょうか。ヒントはその直後の、恐らくマーヤのものと思われるモノローグにあります。
『お前を支える岬一との絆。でももし「それ」がなかったら?何もなかった人の気持ちはお前には分からない』(155P)
ここでいう絆とは、つまり心臓のことです。マーヤが持ち得なかったもの。そして今の広瀬くんと大鳥先輩を繋ぐ唯一の絆。それが心臓なのです。この入学式は「広瀬くんが大鳥先輩の心臓を持っていない入学式」だったのです。4月当時の大鳥先輩にとってオルベリオの心臓がない地球人は興味の対象外です。心臓を持っていないのだから関わる理由がない。例えここにいる大鳥先輩が8巻の大鳥先輩だったとしても、心臓という絆を失った広瀬くんには近づけなかったでしょう。だからこそ、それが何よりも辛い。入学式は心臓を持っていたのが偶然(本当は偶然ではないけど)広瀬くんだったから仲間になった。でも今は広瀬くんが心臓を持っていてくれるから仲間でいられる。価値観が逆転しつつある今このタイミングだから、広瀬くんが心臓を持っていなかった入学式というものは大鳥先輩にとって何よりの悪夢なのです。そしてそれは、同時に心臓を持っていないから本物になれないマーヤの恨みを代弁するものでもあります。マーヤは大鳥先輩は、あらゆる絆を失ったひとりぼっちの苦しみを味あわせようとしたのです。
ちなみにここでなぜスガワラではなく古賀さんが広瀬くんの隣にいるのか、ですが、大鳥先輩の視点から考えると色々と理由が思いつきます。まず、3巻から続く話ですが古賀さんは大鳥先輩にとって地球人の代表なので、心臓が無い場合地球人の方に行ってしまうことの象徴として古賀さんがいるという仮説が出せます。また古賀さんも広瀬くんとの絆をギリギリ持ちえなかった女の子なので、大鳥先輩が広瀬くんとの絆を失った代わりに、広瀬くんとの絆を古賀さんが得られたという解釈もできるでしょう。いずれにせよ大鳥先輩にとって古賀さんは苦手な人物なので、嫌がらせとしては良いダメ押しになっています。マーヤは一度古賀さんにちょっかいを出したことがあるので、それを元に利用したのでしょう。夢らしい演出だと言えます。

・広瀬くんを、広瀬くんのままに

そんな無限ループの夢も、最後は広瀬くんに助けられたところで目が覚めます。いえ、正確には、マーヤに伸ばした手が届かなかったところで目が覚めて、そこで広瀬くんが自分を助け出してくれたことを思い出していますね。目が覚めた大鳥先輩は広瀬くんとアイラちゃんが昨日の話をしているところにやってきます。広瀬くんと顔を合わせた先輩は広瀬くんに顔を近づけ一言「いい匂い。」これは……そう……。
大鳥先輩の匂いフェチへの目覚め!!金木犀はこの伏線だったのだ!!
……えー、ではなく。大鳥先輩が心臓という絆に頼らず広瀬くんの存在を確かめようとしているのでしょう。マーヤは大鳥先輩に心臓という絆が無かった世界を見せました。しかし、大鳥先輩が一切の絆が無い世界に放り込まれても広瀬くんはそこから彼女を助け出してくれました。それは大鳥先輩が心臓という絆に頼ることなく広瀬くんを広瀬くんのままでもう一度見つめるきっかけになったのでしょう。匂い、というのがポイントです。何故なら、広瀬くんの匂いは広瀬くんのものであって心臓のものではないからです。8巻の前半で広瀬くんの心臓の鼓動を聴いて絆を確かめようとするシーンがありましたが、こちらはあくまで広瀬くんという人間を確かめる行為です。心臓という絆が無くなる可能性を見せられたことで二人の関係は一度弱まったようにも見えますが、実はそれが返って心臓という絆に頼らない二人の関係を築くことに繋がっているのです。
翻って自分の領域に閉じこもったマーヤ。盛大に泣いています。プライドをズタズタにされてしまったのでまぁ仕方ないでしょう。凪に対しても終始怯えてばかりです。もっとも、あのときマーヤを煽ったのは凪地震ではなかったようですが。そんなマーヤを凪は突き放すでも励ますでもなく、軽く同情して去っていきます。今回マーヤはかなりバックグラウンドを掘り下げられていますね。5巻のときに、アイラちゃんの兄ヴァギトがアイラちゃんを兄目線でいじり続けた結果、アイラちゃんがより馴染みやすいキャラクターになったことがりました。大抵優位に立っている新しい登場人物はさらに上の人物にいじられると他の人物と同じところまで落ちてくることがあります。マーヤも今回ボロボロにされたところを凪に頭を撫でられて軽く慰められたことで、もしかしたら今までよりも人間味のあるキャラクターになっていくかもしれませんね。
8巻の最後、アイラちゃんの家から帰宅する途中、お互いに気付かぬまますれ違う岬一と凪。お互いの進む道が分かれていくことを強く実感する演出です。広瀬くんが天の海に着いたところで8巻は終わります。

 


以上、大まかに8巻をざっくりまとめて振り返ってきました。心臓という絆に頼らずとも広瀬くんと一緒にいられるようになりつつある大鳥先輩が、次に直面することになる問題は果たしてどのようなものなのでしょうか。9巻が今から楽しみです。ざっくりまとめた分粗の多いまとめではありますが、これを読んでぼっち侵略の新たな面白さを見つけることができたならば幸いです。それでは。