ぼっちQ&A!~小川麻衣子作品感想ブログ~

『ひとりぼっちの地球侵略』や『魚の見る夢』等、漫画家の小川麻衣子先生の作品について感想を綴ったブログです。

小川麻衣子先生最新作『てのひら創世記』第一話感想

今回は、小川麻衣子先生の最新作『てのひら創世記』第一話「月と太陽の巡り」について、あれこれ細かいところを見ていきたいと思います。初っぱなからかなり頭を抱えさせられ、「あぁ……ぼっち侵略読んでるときはいつもこんな感じだったなぁ……」と懐かしくなりました。その分一話のみの感想にしてはかなりの長文になってしまいましたが、お付き合いいただければ幸いです。

1.タイトルについて。

本作品の『てのひら創世記』というタイトルは、恐らく藤子・F・不二雄先生のドラえもん長編作品『ドラえもん のびたの創世日記』かSF短編の『創世日記』から取っていると考えられます。ただ、第一話の段階では内容に関してこれらの作品の影響は見られません。ぼっち侵略でも『ひとりぼっちの宇宙戦争』をタイトルの元ネタとしつつも、内容に関しては別作品の影響の方が顕著だったので、今回もそれと同様と思われます。
まぁ、他作品の影響に関してはこれからじわじわ見えてくるでしょうから、じっくり向かい合う必要がありますね。
で、フォント。前回は『君の名は』のおかげでA1明朝と分かったのですが、今回は全く分かりません。随分変則的なフォントですし、他の作品に使われることを期待するより有識者に聞いた方が早いですね。
英題(?)は『Genesis in our hands』 となっています。これについては……前回の『lonely alien』 が意訳に過ぎて疑問を持っていた人が多かった印象ですが(実際海外では『Invading the world all alone』の方がよく使われていました)、こちらは大分タイトルそのまんま(?)の英題となっています。これなら違和感がない……のかな?

ついでに第一話のサブタイトル、「月と太陽の巡り」についても。と言っても、こちらは日々の生活や長い年月を意識させる時間の流れと、それらの繰り返しをイメージさせる以上の意図は現状見えないですね。まぁそれだけでもぼっち侵略と同様のテーマの繋がりを感じ取ることは十二分に可能なのですが、今無理にそれを掘り返すよりも作品を読み込んでから考えた方が得策でしょう。

ちなみに一応検索をかけたところ、ルパン三世のテレビスペシャルのエンディングテーマで「月と太陽のめぐり」という曲があるとのことでした。いや、まさかね……よりによって1996年のテレビスペシャルですが、まぁまさかね。ははは。

2.主人公「須崎愛一郎」とヒロイン「柊千絵」のデザインについて。

この二人については本編を読み解く際に細かく見ていくので、まずは概要から。
愛一郎と千絵は、前作のぼっち侵略からどう新しいデザインの主人公とヒロインを作り出すか、試行錯誤を重ねた後が見て取れます。
まず愛一郎ですが、金髪です。これはなるほどと思いました。小川先生はキャラクターの髪の毛にトーンを基本的に使いません。『いつか、君を』の際はヒロインの髪の毛にトーンが貼ってありましたが、あちらは小川先生のご親友でもあるあらた伊里先生が手伝われたものなので、恐らく自身で多用するには難しい手なのでしょう。
その上で主人公の男の子の髪の毛をどうデザインするかという話になるのですが、ぼっち侵略の広瀬くんは黒髪の短髪で、それ他には長く伸ばして後ろで束ねるか(広瀬凪)、前髪に癖をつける等のアレンジが主な選択肢でした。そこで金髪です。これならトーンを貼らずとも表現できますし、前作の広瀬くんとも十二分に差別化できます。
全体像を見ると、中学生ではあるものの背格好は広瀬くんと然程変わりのないデザインです。それでも金髪であるために全く違うキャラクターに見えますし、またそこから不良設定にすることで他にもいろいろな面で差別化できています。個人的に一番差別化されていると感じる部分は、やはり不良であることでしょうか。これは勿論乱暴な性格になるというのもありますが、何より……絶対体つきが逞しいはず、というのが大きいと思ってます。ぼっち侵略では、大鳥先輩がマハという完成された肉体をもつ男性と比較して、広瀬くんの男らしさをどう見いだしそれに惹かれるか、ということを13巻で色々掘り下げていました。が、今作の場合最初から愛一郎は絶対逞しい! なぜなら不良だから! さぁ頑張れ愛一郎! 千絵にかっこいいところを見せるんだ!
ただちょっと気になるのは、不良なのであんまり笑顔が見られないところでしょうか。小川先生の描く男の子、凄く笑顔がいいんですよね……ひーくんをなだめるための誤魔化しの笑顔ですらめっちゃ映えるので、やっぱりいい笑顔が見たい……小川先生何卒お願いします……。
次は千絵ですが、髪をサイドで軽く束ねています。アシンメトリーを強調したデザインというのも今までの小川先生の描いてきたヒロインにはなかったものです。短髪か長髪か、という二択を上手く回避しています。詳しく見てみると、大鳥先輩のおかっぱよりも長いミディアムヘアーで、髪の毛を赤い紐で右に束ねています。カラーで見ると髪の毛の描き方がすんごくいい……活発さを感じさせるいいデザインです。
博多からやってきたままのセーラー服のままで生活しているようですが、これもぼっち侵略との差別化でしょう。このセーラー服と前述した髪型で、バトルの多い第一話でも女の子っぽさが然程損なわれていないんですよね。可愛い。で、実は出会いの場面ではセーラー服の下に黒の長袖が覗いています。これは何だろうかと頭を捻っていたのですが……彼女の紐無しランニングシューズを踏まえて考えると、これレディースのスポーツウェアだったりしません? 恐らく彼女も花形流の門を叩いてすぐ戦闘になることを想定していたでしょうし、事前に汗で制服が乱れないようにスポーツウェアを着ていた……んですかね? ともあれ、適当に喧嘩で制服を乱してしまう愛一郎と対照的ですね。
あと、その……スカートが凄く短く見える……大鳥先輩とそれほど変わらないはずなのに、靴下が黒から白に変わっただけで短く見える……マジック……ぼっち侵略第一話では苦悩の末大鳥先輩のパンツを描かなかった小川先生ですが、果たして今回は如何に……。
もう一つ、二人の描き方で注目したいのは目ですね。愛一郎は不良っぽさをイメージしてか目にハイライトが基本ありません。反対に千絵の場合、愛一郎と初めて出会った際のコマでかなり目が細かく描かれています。ぼっち侵略の大鳥先輩は感情を感じさせない真っ黒な目をしていましたが、千絵は目に奥行きが感じられ、非常に透明感があります。
この目の描かれ方が、話が進んでいくに従って逆転していくんですよね。愛一郎は千絵とのやり取りが増える後半になると、受け身に回った際にハイライトが増えるようになっています。一方で千絵は戦闘に入るとスイッチが入ったかのように目の奥行きが描かれなくなり、殺意が読み取れるような目へと変化していきます。この辺りのバトルシーンの目の描き方はぼっち侵略でも見かけたものが非常に多いので、気になる人は見比べてみるといいと思います。こうした目の描き方の多様な変化が、今後どう作劇に活かされるかも気になるところです。

3.冒頭~回想開始まで

さて、キャラクターの概要を押さえたところで冒頭から見ていきましょう。

 

出会いとは
いつも突然な
通り雨のようである


須崎太一郎

 

うるせー! お前の出会いは知らねぇーが、愛一郎と千絵の出会いって絶対お前が最低半分は仕組んだようなものじゃねえかぁ!!!
いや、「やったのか、愛一郎…」とか抜かしてニヤリと笑っていたりするけど、妻と子供残して蒸発した奴が押しつけていい台詞ではない。現時点の情報では千絵が愛一郎に会いに行ったようなものだが、それだって柊の分家の事情によるものである程度予定調和だし、地流丸とその対になる刀の存在を踏まえると絶対になるべくしてなってるでしょうこれ。
繰り返して受け継がれる伝統というのはぼっち侵略のテーマの一つでもあるしそれが受け継がれている格好だが、この様子だと今回は割とかなりひどい伝統の押しつけになっている可能性がある……のか? 
読み返すたびにキレ散らかしてる部分ではありますが、こればっかり見てると話が進まないので次に進みましょう。制服がボロボロで不敵な愛一郎、勇ましい喧嘩の後かと思いきやバーゲンセールで大変だっただけなんだぜー! というギャグスタート。コメディーだぁ! まぁ実際第一話内ではこの冒頭ぐらいしかコメディーっぽい部分がないのですが、事前の宣伝文句を読む限りではこうしたやり取りに重心を置きつつ所謂セカイ系っぽい話がしたい筈……なんですけどね……なんかもうぼっち侵略同様1巻ごとに最低1バトルみたいな未来しか見えない……。
で、千絵はこの状況を「こうなったのは誰が原因だと思っている(おまえのせいじゃ愛一郎)。」と言ってるわけですが、千絵が家に帰らずこうしてお守りをしているということは、彼女にも何らかの縛りとメリットがある筈なんですよね。愛一郎まで面倒を見ることを受け入れている理由も謎ですが、ここら辺の設定開示は次回すぎに欲しいところ。にしても千絵、博多から一人でやってきて学校とか大丈夫なんだろうか……。
何度読み返しても結託しているとも拮抗しているとも言い難い冒頭で、中々バランスを取るのが難しい環境を作ったなぁと思うばかりです。ぼっち侵略と比べて結構しんどそうだ……。

余談ですが、「ひーくん」という名前はどこから来ているのでしょうか。名前か苗字かのどちらかなのでしょうが、もしこれが「柊」の「ひ」なら、愛一郎は婿入りということになります。わーお。楽しみですね!!(満面の笑み)

4.回想開始~愛一郎と千絵の出会いまで

ぼっち侵略読者の一部は、この回想が始まってすぐにあることに気づいたのではないでしょうか。
そう、背景の描き込みが、細かいのです!
見よこの電柱だの電線だのの細やかさ! 道場の門から和室の内部まで、線の多い背景がきっちりしている! うぉー!
……まぁそんなことは置いておいて、愛一郎の喧嘩シーン。自身の地雷に触れた後輩を殴る場面もそうですが、ここは腕の太さを強調しようとしてるように見えます。なんせ学ランだと体の筋肉のラインが見えないので、腕をまくらせてそこを勇ましく見せるしかないんですよね。
で、自身が強い理由を父親のお陰じゃないのかと言われて怒る。自分の強さを憎んでいる父親のお陰と言われては彼も気に入らないでしょう。剣道場の看板を外すことで自分と父親の「繋がり」を壊しにかかります。ここで愛一郎が過去との繋がりを断ち切ろうとしているキャラクターであることが既に明示されています。
そこに千絵登場。目が綺麗。編み笠で表情を隠しておいてから、名乗る際に上目遣い! ぐわー可愛い! 可愛いが騙されるなよ! コイツはこれから丁寧に挨拶した相手をボコボコにするのだ! この笑顔で! ぼっち侵略第一話から受け継がれる、ヒロインが可愛いけどやろうとしてることはヤベーというパターンです。ぼっち侵略では「最悪だ。本当にムカつく。」と広瀬くんがキレていましたが、愛一郎も太一郎の息子! と言われてやっぱりファーストインプレッションがよくない。
で、「「花形流」の流れを共に支える者、お見知りおきを。」なーんて言ってるわけですが、目的から推測するにコイツは愛一郎に勝ったら意気揚々と帰ってそれでおしまいにするつもりの筈で、つまりお見知り置きをもへったくれもないわけです。ひでー! ともあれ、花形流や父との繋がりを断ち切ろうとする愛一郎と、分家であってもそれを必死に守ろうとする千絵が対立する構図がここで完璧に完成しちゃってるんですよね。うわー相性悪い。これからひーくん一人でこの二人を繋ぎ止めるのか……。

5.「花形流」の説明と決闘の申し込み

で、いつ始まったか定かでない謎の古武術「花形流」とその分家である「柊花形流」の説明を千絵がしています。でもこれ千絵が知らないだけで、太一郎は勿論のこと、ひーくん誕生前後のリアクションを見る限り、剣術を全く知らない愛一郎の母や分家であるはずの千絵の母でさえも裏側の事情はある程度知っていそうなんですよね。千絵、踊らされてない? 信じていたものに踊らされてアイデンティティが崩壊するパターン……大鳥先輩の系譜……。
そんなこんなで千絵は分家と宗家の関係を断ち切るために決闘を申し込むわけですが、完全にいらんことをしていますよね、これ。そもそも「「花形流」の流れを共に~」の台詞と矛盾していますし、「テメーらが縁切るのは勝手にしろよ。」という愛一郎の返答が全てであって、千絵がここで無理矢理花形流を倒して泊をつけようとするのはなんというか、完全に蛇足のように見えます。
愛一郎も愛一郎で、不良だからとは言え無視してもいい決闘の申し込みをなぜか受諾しています。挙げ句「女は殴らない趣味だったのに!」と言ってしまう始末。だったら何故そんなことやってるんだよ! とツッコミたくなる場面ですが……案外この辺り結構重要なのでは、と一通り読み直して考え直しつつあります。後々の展開も踏まえて話すので一旦ここは後回し。

その代わりと言ってはなんですが、千絵の言動から花形流と柊花形流の繋がりがどういうものだったのか少し見えてくる、という話にも触れておきましょう。千絵は既に廃れたも同然の本家との繋がりをそれでもなお無理矢理断とうとしているわけですが、ぼっち侵略においても彼女と同様の行動をとったキャラクターがいます。そう、ゾキです。

「もうオルベリオ王も星もねぇっていうのに形のない力だけが残っていやがる。俺はこの形を変えたい。」

というのがぼっち侵略10巻におけるゾキの主張だったわけですが、これと同じ構図がてのひら創世記でも成立するなら、柊花形流がどれだけ栄えても本家の花形流に抗えない何かがあったのかもしれません。それを千絵がどれだけ知っていたかは定かではありませんが、それでも周りの人間の様子から何か思うことがあってこういう行動を起こしたのかもしれませんね。とは言え、ゾキが失敗したようにそれでもこの行動自体があまり良い方法でないことに変わりはないのですが。

最後に余談ですが、刀、決闘、これは……ウテナ……!! 世界を革命する力を……!!

小川麻衣子先生は『少女革命ウテナ』の大ファンで、ぼっち侵略でもオマージュとおぼしきシーンが多数登場しています。まぁそういうことです。はい。

6.決闘開始~二人の確執

いよいよ決闘開始、まずは千絵が愛一郎に地流丸で斬りかかります。今回は刀で勝負している以上、刀の軌跡を描くことがどうしても多くなるのですが、小川先生はこうしたアクションシーンの動きの軌跡をかなり強調して描くことが多いです。個人的にこうした動きの描き方を多用するようになったのはぼっち侵略のゾキ戦からかなぁと考えているのですが、動いている物体そのものよりもその軌跡を優先し、一本の太い線のように描いています。割と特徴的な描写だと思います。
にしても愛一郎も千絵も腕に自信はあるようで、初っぱなからバトルのレベルが結構高めに設定されているなぁという印象があります。こっから上げていくと結構ハードモードになりそうな予感……まぁまだ何とどうこれから闘うのかもさっぱりですし、何より売り文句は「世界系日常コメディー」なのでね! 
で、愛一郎に気圧された千絵がその立ち回りから花形流の基礎を見い出すと、それに対し愛一郎は激昂します。思い出すのは家を捨てて消え去った太一郎と、彼のいなくなった家で寂しそうに佇む母の背中です。ここは非常に重要な描写です。例えばぼっち侵略2巻においても、広瀬くんはおじいちゃんがコーヒーを焙煎する様子を後ろから眺めていたりします。台詞にすることなく、自身が大切にしているもの、守りたいものを雄弁に語っているわけです。これと同じことが愛一郎の過去の描写にも当てはまります。
家系も血筋も下らないと一蹴する愛一郎が大切にしたいものは、「今ここにある家族の幸せ」なのです。父親がいなくなって母が悲しんだ、だからこれ以上、家族の幸せが損なわれないように自分が守ろうと、恐らくそう考えたのでしょう。不良になったのも、あるいは父親がいない中自分なりに強くなることで母や今の生活を守れるようになろうという意識が少しはあったのかもしれません。小川先生がてのひら創世記の連載前に描いた読み切り作品『過ぎれば尊し』でも、同じように「父親がいないから俺が男らしくならなきゃ~(攻略)」と主人公の一人である須藤ハヤタが発言しています。恐らくここと同様の思考が働いているのでしょう。
一方の千絵は先述した通り、血筋や家族といった過去の繋がりを守ろうとするキャラクターです。だからこそそれを下らないと言い放つ愛一郎が許せない。ここに来て彼らの対立は決定的なものとなります。
……いや、なるのですが、ここで先ほど一旦置いておいた決闘を申し込むのも受けるのもおかしい、という話が重要になってきます。そもそも「今の家族の幸せ」と「過去から続く血筋や家系を守り受け継ぐ」ことは別に対立するものとは限りません。にも拘わらず、千絵は血筋の存続等に関して抜本的な解決法でもない決闘を申し込み、愛一郎も不必要な決闘を受けて家庭内にいらぬ面倒事を持ち込んでいます。お互いがそれぞれ最適解でない行動を取っていて、間違いを犯しているのです。そして出会った時点の描写では愛一郎は繋がりを断つ者、千絵は繋がりを守る者という構図になっていましたが、今や千絵も宗家と分家の繋がりを断つ側に回り、互いが互いに繋がりを断ち切ろうとしています。これはぼっち侵略においてゾキやマハが進んでしまい、やがて破滅した道でもあります。小川麻衣子先生の作品においては基本的に避けるべきルートに、第一話にして主人公とヒロインが進んでしまっているんですよね。
この第一話、どうにも千絵の矛盾する発言や愛一郎にとって不必要でしかない決闘が腑に落ちなかったのですが、要するにこのバトルは二人が互いの望みに対して最適解でない行動を取り、繋がりを断ち切るという間違いを犯す、という共通点を作り出すためのものだったのです。そしてその争いを止めさせ、互いの関係や彼らが本来進むべき道を指し示すためにひーくんが投入される構図になっているのです。てのひら創世記の告知が来たとき、ひーくんをどのようなキャラクターとして活かすのかずっと考えていましたが、なるほどこう来たか、という思いです。まず最初に間違えさせるのか! おかげで読むのに苦労した……。

7.ひーくん、現る。

そんなこんなで決闘も佳境に入り、千絵はどんどん愛一郎を圧倒していきます。一発が重く喧嘩が強いと言えども所詮剣道三倍段。拮抗しているようにも見えますが、まぁ地流丸のことを考えればひーくんの乱入さえなければ千絵が勝っていたでしょう。で、愛一郎も竹刀を仕方なく持って抵抗します。この竹刀の切っ先の揺らし方、いいですね。
それを見た愛一郎の母が「あの二人は昔の私たちに似ています。あの二人ならもしかして…」などと突然言い始めます。剣術分からないのに何がどう似ているんだ? という感じですが、まぁひーくん絡みで何かしら知っているのでしょう。というか「二人なら」ということは、太一郎は妻と何かをやろうとして失敗したのか? 割とありそうな話ですが、もしそうならそれを息子に押しつけて蒸発するのもなぁ……。
そして千絵がいよいよ地流丸の力? を駆使して本気で愛一郎に襲いかかると破壊された道場の床下から地流丸によく似た模造刀が出現。愛一郎がその刀に咄嗟に手を伸ばし地流丸を受け止めると龍のような謎のエフェクトが勢いよく空に昇っていきます。その後剣は二振りとも消え、代わりにひーくんが現れたのでした。
……いや、思わず一気に書いてしまいましたが……なんかこうすげー勢いで突っ走ってるなぁここら辺……w
まず気になるのは、この地流丸の力は人間を相手にするものなのか、ということ。千絵の「この剣を人に振るうのは初めてだからな。」という台詞は。まぁ普通に考えれば鍛錬においてしか振るったことがないと言うことなのでしょう。なのでしょうが、わざわざ対人剣でこんな過剰な威力は必要なんでしょうか? どうにも人外と戦闘するためとしか思えない破壊力なんですよね……。まぁ案外二人がこれから戦う相手がみんなこんな感じのヤベー奴なら釣り合いそうではありますが……。
そして太一郎は何をどう読んで刀を床下に隠したんだよ。とんでもない偶然に託しておいて「やったのか、愛一郎…」も何もないんですが。分家が本家を訪ねに来ることは予想できれば床下が破壊されることまで予想することも造作も無い……?
そして千絵の母親らしき女性が「この気は…千絵…」とか言い出してますが、気?! そういう世界観なのか!? 小川先生ここら辺のギミックの説明あんまりキッチリやらないからまた理解するのに苦労しそうだなぁ……w
そしてひーくん。元気な男の子です! 二振りの刀と入れ替わりで出現したということは、今後はひーくんが地流丸を初めとする模造刀の管理をするのかもしれません。そうなると、千絵が博多に帰れなくなったのは地流丸とひーくんがセットになっているから、という可能性も案外ありそうですね。
ともあれひーくんの登場によって刀が失われ、決闘は中止。第一話ではひーくんは二人が間違いを犯さないようにするストッパーとしての役割が主ですが、今後これがどう変わるかも注目ですね。
で、そこにのこのこ近づいてきた愛一郎の母にこの子の両親は君らだよ~と言われ、


「「え?」」

 

「生まれたぞ。始まるぞ。出会いは始まり。始まりは世界を創るのだ。思春期ネオ・ジェネシス始動!」


いや、このぶっ飛び具合に似合わぬ決め台詞のようなアオリがついているけど、こう、なんだろう、凄く困惑する……。
ちゃんと説明してくれ! これはなんなんだぁ!
ぼっち侵略のそれと比べて、ものすごく説明を飛ばして突っ走ってる第一話という印象が強いです。説明のタイミングをずらすというのは小川先生の作劇の基本というか癖みたいなものと個人的には思っていますが、これは今まで見た中でもトップクラスに説明が少ない……。
まぁ、ぼっち侵略と同じ構成なら第一話は第二話とセットなので、そこでまた物語の方針を判断することになるでしょう。もう少し待つんじゃよ。

まとめ

第一話は舞台背景の説明よりも、主人公とヒロインの土台作りと、ひーくんを登場させるための二人の確執を中心に描いている印象でした。この感じだと、ぼっち侵略よりもじっくり腰を据えて話を作りたいのかなぁと妄想したりします。
こうなるとこの大ジャンプを第二話でどれだけ着地させるかが重要になる筈なので、そこをよく見ていきたいですね。ただ、ぼっち侵略と同じであるなら第二話はキャラクター周りの読み解きがより大変なるので、今のうちに覚悟しておきましょう。
ではでは。