ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

ひとりぼっちの地球侵略13巻を改めてじっくり読み直してみた(前編:暁行編)。

こんにちは、さいむです。

今回は、『ひとりぼっちの地球侵略』13巻について、

・【前編:暁行編】

・【後編:マハヤ王編】

の前後編に分けた解説を行っていきます。結構長くなると思いますが、よろしくお願いします。

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・12巻の後半から始まる「2年目のぼっち侵略」

さて、前編は暁行というキャラクターを軸にぼっち侵略13巻の内容を読みこんでいくわけですが、そのためにはまず13巻が「2年目のぼっち侵略」であることを抑えておかなければなりません。「2年目ぼっち侵略」とは何なのか、それは第59話「新学期の到来」から始まる12巻の後半を読むことで分かります。

ゾキとの対決が終わって数ヶ月後、腕も復活した大鳥先輩と広瀬くんは青箱高校で再会します。その直後にキルシスの宇宙人から攻撃を受ける中で、広瀬くんは大鳥先輩に港を封鎖するという決意を宣言し、力を貸してほしいと言います。

更に、大鳥先輩の秘密基地にマハヤ王の幻影が登場した後、広瀬くんは自分と共に地球を征服する約束を大鳥先輩とします。

マハヤ王に関しては後述するとして、ここでは142Pで「春うららかに、2年目の風が吹く…」というモノローグが入っていることが重要です。確かに2年目という言葉は使われていますが、この2年目とはどういう意味なのでしょうか。それは12巻の後半における演出を、1巻のそれと比較することで明らかになります。

ぼっち侵略1巻では、ゴズ星系の宇宙人を大鳥先輩が倒すことになり、その過程で広瀬くんが大鳥先輩に提案された約束を承諾します。それに対し、第59話ではキルシスの宇宙人を広瀬くんが倒し、更に第60話では広瀬くんの方から「俺と一緒に地球を征服しようぜ!」と1巻の約束を再確認する形で大鳥先輩に呼びかけます。

つまり、最初に出てきた宇宙人を倒す役割と、地球征服の提案の立場が1巻と12巻では逆転しているのです。実は、2年目と称された第59話からの展開は、1巻からの大鳥先輩達のやり取りを、立場や構図が反転した状態で繰り返しているのです。

その意図についてはマハヤ王編に譲るとして、前編ではひとまず13巻における2年目の描写を追っていきたいと思います。

地球の依り代として暁行が登場した第61話では、暁行が広瀬くんにキスをし、それを大鳥先輩が目撃します。その後大鳥先輩は地球に広瀬くんを取られてしまうという焦りからか、広瀬くんを押し倒そうとするかのような行動を取り、それが広瀬くんに突っぱねられると拗ねてしまいます。

こうした大鳥先輩のキスに関する一連の拗ね方は、実は2~3巻におけるキス、及びキスを巡る古賀さんとの一連のやり取りと対比することが可能となっています。当時の大鳥先輩はキスをしたことを自身と広瀬くんとの関係の証明とし、また古賀さんを含めた学校のみんなも守ろうとする広瀬くんの行動に対し、「自分の仲間になったのではないのか(なのに地球人の味方をするのか)」と拗ねてしまっていました。今回の大鳥先輩は反対に、暁行が広瀬くんとキスをしてしまい、また広瀬くんが地球の王となる(地球を征服する)に際して暁行と結婚するという提案が出されたことで、暁行に広瀬くんを奪われてしまうのではないか、という焦りがあります。そのため、大鳥先輩は広瀬くんと自分の関係の証としての「キス」を広瀬くんに求めているのです。

このキスは2~3巻の頃の大鳥先輩が抱いていた「仲間」という未熟な関係の認識を保護するものでは無く、12巻までの成長を経て、広瀬くんと大鳥先輩が互いのことをしっかりと思い合うようになったことの証としてのキスとなっています。これはこれまでの大鳥先輩達の成長が見られる部分でもありますが、一方でそれを2~3巻とは逆の構図として見せることで、12巻後半における1巻とは逆の構図となっている演出と繋がっているように見せてもいるのです。

次に4巻は一旦飛ばして、5巻にあたる描写が124Pに存在します。広瀬くんが大鳥先輩にタオルを渡す場面です。タオルを渡されただけなのに大鳥先輩はやけにときめいていますが、これには理由があります。

5巻第23話「休息日」では、古賀さんが広瀬くんの腕にハンカチを巻いてあげるシーンがあります。これよりも前に大鳥先輩は広瀬くんの胸に傷がないこと惜しんでいたりと、広瀬くんと自分が仲間であること(何らかの関係にあること)の証を探そうとしていました(※胸の傷に関しては広瀬くんに他の人が寄って来なくなるからという意味合いもあります)。丁度その時に古賀さんがハンカチを巻く様子を見て嫉妬し、後々自分もハンカチを広瀬くんの腕に巻いて見せようとします。5巻では他にも、眼鏡が外れた龍介がアイラの髪の毛をタオルでふいてあげるシーンがあったりと、やたらこの手のシーンが魅力的に描かれているわけですが、13巻で広瀬くんがタオルを渡すシーンもその流れを踏襲していると言っていいでしょう。この場合は今までと逆で広瀬くんが大鳥先輩にタオルを渡す構図になっており、この点でも12巻終盤から今までの演出と繋がりがあることが分かります。広瀬くんは暁行の側に行ってしまったのではなく、あくまで大鳥先輩のことを思って行動しようとしている、ということの証になっているのです。

で、4巻についてなのですが、これは第66話「零への調和」が該当します。今まで分からなかった、「大鳥先輩が目覚めてから広瀬くんに出会うまでの期間」が明らかになる回想ですね。広瀬くんではなく大鳥先輩視点からの回想であり、10年前の大鳥先輩が一度死んだ上での、現在の大鳥先輩が如何にして”生まれてきたか”という話でもあります。7巻でも言及されていましたが、大鳥先輩は一度心臓を失った際に記憶を失い、アイラのおばあちゃんからも情報としてしか過去の出来事を知ることができませんでした。今の大鳥先輩が昔の彼女とは断絶された存在である以上、この回想は現在の大鳥先輩が生まれたときの話であり、マハヤ王編で後述する10年前の大鳥先輩がマハヤ王から授かった使命(約束)に関する記憶との対比でもあるわけです。

・「2年目のぼっち侵略」における暁行の役割

さて、13巻で描かれている、1巻からの流れと対比できる演出で主だったものは以上になります。6巻以降に関しては、13巻巻末の次巻予告から察するに14巻で描かれるでしょう。では、これらを踏まえた上で、暁行の13巻における役割について考えていきましょう。

まずは暁行の紹介から。藤代暁行は隠れ目男子小学生。彼の先祖は、霊脈孔という地球の巨大な精神エネルギーが流れる洞窟湖の水を飲んだことがきっかけで地球の意思の依代となり、暁行が現在その役目を背負っています。地球の意思とは何なのかという話ですが、まぁざっくり言えばガイア理論ですね。

ガイア理論 - Wikipedia

ガイア理論(ガイアりろん)とは、地球生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることを、ある種の「巨大な生命体」と見なす仮説である。ガイア仮説ともいう。

地球の意思は広瀬くんが地球の王になろうとしていると聞きつけ、暁行の体を依代として登場。広瀬くんが地球の王となるためには自分と結婚する必要がある、と言い出します。大雑把な概要はこんなところですね。

暁行の紹介が終わったところで、彼の一つ目の役割を説明しましょう。それは、単純に作品全体の設定を掘り下げるためです。ゾキもいなくなり、新しく現れたマハヤ王もまだふにゃふにゃしてたり消えたりで色々喋ってくれなさそうな現在、、物語を進めていくためには港やほしのきおく、アルシャの成り立ちについてなどの情報を握っているキャラクターが必要になります。暁行にその役割が課せられたのです。

勿論、そうした情報を話すだけならアイラのおばあちゃん(地味に今回ポール・ハピ―が本名であると確定しましたね。初出は3巻です)が話せばいいのですが、そうはなりませんでした。それは、彼が担っている役割が他にもあるからです。

二つ目の役割は、大鳥先輩が地球で生きていってもいいのか、という問題への赦しや、広瀬くんが地球侵略をするための目標の確定です。地球の意思というものを人の形で用意することで、これらの問題の解決への道のりが開けてくるのです。

ぼっち侵略は元々、キャラクターの背負っている罪(問題)に関してきっちり追及を行っていく漫画です。7巻でも、大鳥先輩が松横市の人々を間接的に殺めたことについての問答が凪と広瀬くんの間でありましたし、その凪が12巻で命を落とした背景には、ゾキが松横市の人々を殺めたこと、また凪がそれを広瀬くんの決心を固めさせるために利用してしまったことも一因となっています。大鳥先輩自身の場合、地球侵略を目的としていた宇宙人が地球で生きていっていいのか、仲間や他人というものを全く知らなかった人間が誰かと一緒にいようとしていいのか、という問題が1巻の頃から設定されていました。12巻のざっくりまとめで書いたように、こうした問題は大鳥先輩の内面においてはほぼクリアされています。そうなると次は、それを誰が認めるのか、あるいは保証するのかという問題が立ちふさがるわけですが、暁行さえそれを容認するのであればこの問題も解決されるのです。ぼっち侵略は松横市という狭い空間を舞台として描かれてきた物語です。暁行を登場させることで、物語の設定の解決までに必要となる手順やキャラクター数を絞っているのでしょう。広瀬くんの地球征服の方法についても言わずもがなです。

三つ目の役割は、凪が担っていたテーマの引継ぎです。そもそも暁行と凪は、お互い何かに寄生されており、時々それと人格が入れ替わる、という点で設定が似ています。恐らくこれは意図的なものでしょうが、一方で凪と暁行には対照的な側面も存在します。凪とゾキは家族や伝統といったものを受け継がず、あるいは破壊するという方針については一致しており、それが何かを継いでいく決心を固めたアイラや大鳥先輩、広瀬くんとのテーマ的な対立にもなっていました。暁行の場合、彼が地球の意思の依代になった原因は先祖にある、という部分がポイントになってきます。地球の依代としてではなく暁行本人として物語に初登場したとき、彼はこう言います。

「先祖から引き継がれてきた家の仕事も、突然与えられるぼくのものじゃない力も、すべてが許容範囲を超えていて…ぼくが受け継ぐことができるのでしょうか。」

アイラはそれに対してやりたければやればいいし、やりたくないならやらなければいいと返答するのですが、次のページで広瀬くんとアイラはやけにドヤ顔いい顔をしています。自分達がそうしてきたことで得られたものがあると分かっているからこその、確信に満ちた表情と言えるでしょう。結果として暁行は先祖代々の役割を現状全うしており、また地球の意思も地球を守るために行動を起こそうとしています。暁行は凪を彷彿とさせる設定を背負いながらも、その上で広瀬くん達の側で歩んでいけるように再設計されたキャラクターとも考えられるわけです。

さて、ここまで述べてきた役割と、「2年目のぼっち侵略」の内容を合わせて考えると、暁行というキャラクターの総合的な役割が見えてきます。実は、2年目を始めるにあたって大きな問題が一つありました。それは凪がもういない、ということです。凪及びゾキはそれぞれの役割やテーマをきっちり使い果たして退場したので、何かしら別のキャラクターをそこに補填しなければなりません。そこで、凪を重ねられるような設定にしつつも、広瀬くん達の側に立つ存在として暁行を登場させ、1年目とは逆の構図で繰り返される2年目のぼっち侵略を展開するために、必要な役割を担わせていったのです。

 

以上が、ぼっち侵略13巻読み直しの暁行編になります。内容をまとめると、ぼっち侵略12巻の後半から2年目として1年目の展開を構図を逆にしつつなぞっていき、暁行もそのために新たに配置されたキャラクターだと考えられる、ということになります。ただ、ここまでの解説では、2年目を逆の構図にしたのか、という疑問が残ると思います。その答えは、後半のマハヤ王編で解説したいと思います。

 

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