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ぼっちQ&A!~ひとりぼっちの地球侵略感想ブログ~

月刊少年サンデー『ゲッサン』にて好評連載中の漫画『ひとりぼっちの地球侵略』について、徒然なるままに感想を書いていくブログです。

ぼっち侵略コラム:11巻発売によせて~夢と空想の迷い子~

ひとりぼっちの地球侵略 ぼっち侵略感想・考察

こんにちは、さいむです。


今回は、ぼっち侵略11巻発売によせて、ぼっち侵略について軽いコラムを書きたいと思います。

1.宇宙の夢と空想、孤独と死。

書くのですが、まずは「宇宙」について簡単に書いてみたいと思います。「地球」に対する「宇宙」の話です。
宇宙はまだ人間が進出しきれていない場所で、どこまでも広がっている、無限とも言える空間です。人間が住める惑星があるかもしれないし、地球外生命や、宇宙人の文明があるかもしれません。空想がどこまでも広がっていく、夢の宝庫とも呼べる場所です。
一方で、人間は宇宙空間において生身で生き続けることができません。宇宙服やスペースシャトルなど、膨大な技術的補助を受けなければ10秒と生きることは叶わないでしょう。一度地球の重力から解き放たれてしまい、宇宙に放り出されると、再び大地に立つことすら困難です。他の星に辿り着くこともまず有りえず、永遠に宇宙空間をさ迷うことになります。夢と空想の宝庫である宇宙は、同時に孤独と死をイメージしてしまう場所でもあるのです。

2.大鳥先輩という、夢と空想の迷い子。

さて、『ひとりぼっちの地球侵略』のヒロイン大鳥希(以下親しみを込めて大鳥先輩)は、オルベリオという星からやってきた宇宙人です。彼女は地球侵略のために機械に育てられ、一人で地球にやってきました。そのため”他人”という存在が何なのかよく分かっていません。地球人と同等かそれ以上の一般知識を有してはいるものの、他人や仲間とは何なのかという体験に基づいた知識や、他人が何を考えどんな気持ちなのかを感じ取り、理解する能力が身についていないのです。
この『ひとりぼっちの地球侵略』という作品において、大鳥先輩について「ひとりぼっち」という言葉は二つの意味合いを持ちます。一つは「他人や仲間という概念を理解していないため、地球の中で”オルベリオ人”という枠組みに囚われて孤立してしまう」という意味での「ひとりぼっち」。もう一つは、「他人や仲間の気持ちを理解してあげられない(そもそもその発想が無い)ため、一人でから回った言動しかできない」という意味での「ひとりぼっち」です。

 

大鳥先輩は宇宙人なので、宇宙というものから受け取れる夢や空想をいっぱいに詰め込まれた存在として描かれています。ミステリアスで、可愛く、とても強い。しかし一方で、大鳥先輩は宇宙が持つ孤独と死のイメージを強く抱いた存在でもあります。二つの「ひとりぼっち」に縛られているだけでなく、傷を負うことも構わず敵と戦おうしたり、過去に一度心臓を広瀬くんに渡した後、死んだように眠りについたりしています。大鳥先輩は、宇宙というものの持つ二つの側面をある意味で体現したキャラクターなのです。


そしてここで重要なのは、「宇宙」から連想する夢や空想は、私達が住む「地球」から見た場合の話であるということです。宇宙からやって来た大鳥先輩は、別に宇宙に憧れたり夢を持ったりはしていません。彼女は寧ろ地球を含めた宇宙全体でひとりぼっちになっていて、広瀬くんを初めての他人、仲間としてそこから地球を新たな故郷にしたいという夢を持つようにもなっていきます。実は、大鳥先輩は宇宙からやってきた存在であるがゆえに、宇宙の孤独と死の側面だけしか実感することができていないのです。
先述した通り、宇宙には夢が広がっています。宇宙人の大鳥先輩は私達が宇宙によせる”宇宙人”という夢から生まれたキャラクターであると言えます。しかしそれ故に「ひとりぼっち」に縛られ続けてしまう大鳥先輩は、宇宙に我々が抱く夢や空想から生まれた迷い子なのです。

3.宇宙から地球へ、空想から現実へ。

このような状況下で、大鳥先輩はどうすればよいのでしょうか。その鍵は、この物語の主人公、広瀬岬一くん(以下親しみを込めて広瀬くん)にあります。広瀬くんは松横市でずっと生きてきた男の子で、祖父の喫茶店を継ぐという夢を持っています。この夢は、広瀬くんが宇宙ではなく地球側の夢を持っているということを意味します。彼は宇宙の空想ではなく、地球の現実を志向する少年なのです。一方で広瀬くんは、大鳥先輩の心臓を持っており、彼女と強い繋がり、絆があります。そのため、彼だけが大鳥先輩と仲間として接しつつ、二つの「ひとりぼっち」から解放してあげることができます。これこそが、夢と空想の迷い子を孤独から救い出す方法なのです。
大鳥先輩は、地球の松横市で、広瀬くんの隣で生きていくために戦い、色々なことを学び、成長していきます。宇宙という空想を抜け、地球という現実の中で生きていく。『ひとりぼっちの地球侵略』とは、大鳥先輩を二つの「ひとりぼっち」から解放し、大鳥先輩が地球で生きていけるようにしてあげる物語なのです(具体的な解決方法については以前書いた記事に譲るとしましょう)。

4.ある一つの問題、そして11巻へ……。

さて、ここまで書いてきた大鳥先輩の話には、一つ問題があります。それは、「宇宙への夢や空想を、地球(現実)への帰属という形で無にしてしまっていいのか?」ということです。ぼっち侵略は、今まさにこの問題に挑もうとしています。広瀬くんの兄である凪、そして彼を乗っ取りつつあるゴズの王ゾキゴッド・バシデロス・ゴズ(以下親しみは特に込めずにゾキ)の存在がそれです。
凪は心臓に重い病気を抱えており、いつも死と身近に生きてきました。彼はぼっち侵略の登場人物の中では、大鳥先輩以外で唯一死というものの影響を強く受けています。それは、先述した宇宙の持つ一側面でもあります。凪は大鳥先輩と広瀬くんの向かう方向に強く異を唱えられる人間なのです。そしてその右腕を乗っ取ったゾキは広瀬くんの(元は大鳥先輩のものだった)心臓を奪い、宇宙の支配構造を新たに作り変える野望を持っています。凪とゾキ、10巻現在では未だはっきりした関係が語られない二人ですが、大鳥先輩達とは逆の方向、端的に言えば宇宙を目指しているという点において、彼らははっきりと大鳥先輩達を阻む存在であると言えるのです。
ゾキは自らの野望のために松横市を破壊しようとしています。大鳥先輩と広瀬くんは彼を止めなければなりませんが、ゾキが死ぬと凪も一緒に死んでしまいます。凪はあくまでも地球人であり、広瀬くんの兄弟、家族の一員です。彼を殺せば、広瀬くんは自分が大事にしてきた家族という現実の一部を自ら切り捨てることになります。果たして大鳥先輩達はゾキを止められるのか、そして凪に対してどのような決断を下すのか。それは単なる物語の決着のみならず、先述した問題への答えにもなるでしょう。6日後に発売が迫るぼっち侵略11巻で、いよいよそれが描かれようとしています。


『ひとりぼっちの地球侵略』11巻は12月12日発売です。皆さん是非買って、この物語の続きを読んで頂ければと思います。連載されているゲッサンを購読していますが、とても面白い内容になっていることは保証できます。お楽しみに。


以上、ぼっち侵略11巻発売を祝してのコラムでした。ではでは。