時緒、かける少女(3)

(3) 4月。初めて着る高校の制服は、まだ固くて少し動き辛かった。 入学式の青箱高校は離れていてもすぐ分かるほど満開の桜に包まれている。 私は走っている。 他の新入生を追い越していく。 舞っていく桜の花びらを更に散らすように、風を切る。 私は走っている。 あのとき、走り去っていった男の子に自分を重ねていく…